関東の鉄道会社が京都市内に宿泊特化型ホテルを続々とオープンしている。京都で増える訪日客の宿泊需要を背景に、沿線域外での収益拡大とブランド力の向上を模索している。四国や九州の鉄道会社の参入も相次ぎ、市内の「お宿バブル」はさらに過熱している。
地盤エリア外も「需要大」
静岡県を拠点とする静岡鉄道は6月、宿泊特化型ホテル「静鉄ホテルプレジオ」を市営地下鉄烏丸御池駅近くにオープンする。10階建て全99室で、静岡と博多に続く5店舗目の進出場所に京都を選んだ。
今秋には地下鉄四条駅近くにもさらに1棟を建設予定で、同社ホテル事業部は「京都のホテル市場の競争は激しいが、それを上回る訪日客らの需要を見込む」と期待する。
昨年11月には、東京を地盤とする京王電鉄(東京都)の子会社が運営する宿泊特化型ホテル「京王プレリアホテル」(下京区)も開業した。全305室で、女性客や外国人客に人気の大浴場や中庭を備えたという。
京王グループはこれまで都内を中心に、高級クラスのホテルとビジネスホテルを運営してきた。プレリアホテルはその中間層を狙った新たなブランドで、関西初進出となった。
京王プレリアホテル京都の中島一成社長は「近畿での知名度は高くはないが、レジャー客層向けの新たな事業モデルを試行したい」と京都を足掛かりに全国展開を見据える。
関西では、地場の阪急阪神ホールディングスや近鉄グループがホテル業を担ってきたが、近年は関東資本で「宿泊特化型」ホテルの開業も目立ってきているのが特徴的だ。
相模鉄道(横浜市)は昨年10月、四条烏丸に「ザ・ポケットホテル」を開業した。全147室のうちシングルルームが半数近くを占め、全室10平方メートル以下だ。「訪日観光客が多い京都の宿泊需要を取り込みたい」(広報担当者)とする。小田急電鉄(東京都)も下京区の代々木ゼミナール京都校跡地にホテルを開業させた。
西日本鉄道(福岡市)は鴨川沿いで高価格帯のホテルを営業するほか、JR系ではJR四国が昨春1棟貸しの簡易宿所を南区にオープン。JR九州は2021年度以降、新ブランドとなるホテルの建設を下京区に予定している。JR系の両社は、地盤エリア域外での業況拡大を図るため、外国人の宿泊需要が旺盛な京都を新たな拠点としたい考えだ。
鉄道会社がホテルに傾倒する背景には、将来的な沿線人口の減少を見据えた戦略がある。鉄道から派生した流通やレジャー、宅地分譲など、従来通りの事業モデルだけでの収益増が厳しくなる中、ホテル運営は自社所有地の有効活用という側面も強い。資金を貸す側の金融機関にとっても、線路などの資産を持つ鉄道会社は融資しやすい一面があり、ホテルの建設ラッシュが続く京都での鉄道会社による参入はしばらく続きそうだ。