青年・薫を演じた寛 一 郎、その父である佐藤浩市との共演には感慨深いものがあった。「19歳の時に初めて会った佐藤浩市さんの姿と今の寛 一 郎クンの姿がダブったし、佐藤さんと芝居をやっているときに、三國さんと一緒にいるような気持ちになりました。『私も長いことこの世界でやっているんだなぁ』と不思議な感覚になった」と目を細める。親子三世代との共演を通して「3人ともほかの役者にはない異質なモノを持っている。三國さんは素晴らしい役者で、本当に面白い人でしたから。その魂はちゃんと寛 一 郎クンにまで受け継がれている」と役者魂のリレーを見届けた。
雪子役に関わらず「役をいただき、その役になって過ごしているときが一番楽しい」と芸歴60年を超えても演じることに飽きはなく「趣味もないし、家に包丁がないくらい食にも興味がない。ですから今後役がもらえなかったらどんなおばあさんになってしまうのかしら」とユーモア交じりに不安を口にするが、『雪子さんの足音』での瑞々しい振る舞いには、生涯現役の意志と凄みがある。