吉行和子、佐藤浩市&寛 一 郎親子との共演で感じた三國連太郎さんの魂

石井 隼人 石井 隼人
三國連太郎さん一家との“親子三世代”共演を振り返った吉行和子
三國連太郎さん一家との“親子三世代”共演を振り返った吉行和子

 女優歴は60年を越える。5月18日公開の映画「雪子さんの足音」に主演している、女優・吉行和子(83)。ひとつの仕事を長く続けていると、奇跡のようなことが起こる。過去に映画で何度も共演した三國連太郎さんの孫で、佐藤浩市(58)の息子・寛 一 郎(22)と本作で初共演。佐藤とも友情出演という形で顔を合わせた。“親子三世代”共演を実現させた吉行は「三國さんと一緒にいるような気持ちになった」という。その奇跡がもたらした不思議な感慨とは。

 女流作家・木村紅美による第158回芥川賞候補作が原作。寛 一 郎扮する青年・薫を食事や小遣いで飼い慣らそうとする謎多き老大家、雪子をエネルギッシュに怪演する。原作と脚本に目を通して、生き生きと描かれる老女の姿に「血が騒いだ」という吉行は「高齢になるとおばあさん役が増えますが、そのほとんどが“生まれたときからのおばあさん”みたいな、それまでの人生がまったくないかのようなキャラクター。でも女の人はいくつになっても面白い生き物。歳をとろうが女として生きている雪子さんに魅力を感じた」とリアルなキャラクター造形に惚れ込んだ。

 高齢になるとぶつかる壁も本作に限っては全くなかった。“演じる”という言葉よりも“憑依”という言葉が近い。「役が気に入ったものですから、セリフも素直に私の中に入ってきて、苦労するということはありませんでした。若い男の子を支配下に置くという、やっと巡ってきたシチュエーションに対して雪子さんは嬉しかったはず。その気持ちを思うと私自身もなんだか嬉しくて(笑)。撮影期間中は自分でも『生き生きしているなぁ』と思ったほど」と心身ともに若返った気分だ。

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