暑い夏がやって来る。となると、ついつい食べたくなるのがひんやりスイーツだ。そこで大阪・谷町にある“日本一”のジェラート店を訪ねた。今年3月、幕張メッセで開催された「ジェラート日本選手権 課題部門」で第1位。この7月で33周年を迎える本格派の老舗「ジェラテリア・チルコドーロ」だ。
大阪メトロ「谷町六丁目駅」から5分ほど。ドアを開けると「ボンジョルノ!グラッチェ!」と声を掛けられた。おすすめのジェラートを買い、お釣りを受け取ろうとすると「はい、280万円です」。何とも言えないラテンのノリがこの店のひとつの特徴だ。
もちろん、味も腕も半端ない。2011年にはイタリア・リミニで毎年開催されている本場で最も権威ある「国際ジェラートコンテスト」で4位入賞。国内でも15年の「ジェラート・マエストロコンテスト」で準優勝、さらに今年開催された「ジェラート日本選手権」の課題部門で第1位に輝いている。
ジェラート職人、茂木美佐さんのマシンガントークも半端なかった。自身の生い立ちから店の歴史、変遷を一気に。まとめるとこうだ。ケーキ店の長女として生まれ、中3で欧州視察。1984年、19歳の夏にイタリアを訪れ、ジェラートに恋をした。帰国後の85年7月に「チルコドーロ」をオープン。もうすぐ33周年になる。店名は「金の輪」を意味し、祖父が始めたお菓子問屋「マル金」をイタリア語に変換したものだと言う。
「阪神が日本一になった年ですからね。長いですよね。阪神はあれから日本一になっていない」。そんな美佐さんは現在日本ジェラート協会副会長の肩書も持つ。この業界の重鎮でもある。
そもそもジェラートとはイタリアのアイスクリームのこと。起源は古代ローマ時代にさかのぼると言うから半端ない。発祥の地は北イタリアと言われているが、美佐さんのそれは何度も訪れているシチリア仕込み。今年3月に行われた日本選手権の課題部門がアーモンドだったことも運命的だった。というのも誰よりも早くシチリア産のアーモンドに着目。それを作品「マレーナ」(ハーフ360円、フル720円)に生かし切ったからだ。
実際に食べてみると、映画「マレーナ」のモニカ・ベルッチを思わせるような甘い香りが鼻をつき、続いて濃厚でミルキーな食感、それでいて最後はさっぱり。聞くと隠し味に入れたブラッドオレンジのおかげだそう。本場のコンテストで「酒粕を使ってイタリア人の度肝を抜いたった」というチョコレート味の「アモーレ・デッラ・ルーナ」やオリーブを使った「アドリア海の黒真珠」も絶品だ。
訪れたこの日も例によって大盛況。常時20種類以上のつくりたてジェラートが用意されており、店内や外のベンチでいただくこともできる。「おかげさまで日本全国から来てくれます。時には台湾からも。イタリアの方はエスプレッソも頼み、満足されて帰られましたよ」。みなさんも、ぜひ。