サッカーのW杯ロシア大会が14日に開幕した。日本の初戦は19日、対コロンビアだ。サッカーへの注目が集まる今、スペイン1部リーグのFCバルセロナで活躍した同国代表アンドレス・イニエスタがJ1ヴィッセル神戸に移籍した。もちろん今大会に出場しており、15日のポルトガル戦でも随所にワールドクラスのプレーを披露した。そんな世界屈指の名選手が先月26日に神戸市兵庫区で行われた歓迎イベントに登場。ファンから大歓声で迎えられ、期待の大きさがうかがえた。イニエスタがもたらす経済効果はどれほどになるのか。関西大学・宮本勝浩名誉教授は、日本全体で約99億2783万円をもたらすと試算した。
宮本名誉教授は一般的に経済効果について、「イベント、事件、人の行動などによって、消費者、企業、自治体が直接的、間接的に消費または投資した金額の総額のこと」と定義する。
同名誉教授は、イニエスタによる経済効果を計測する基礎となる「直接効果」を以下の4つと仮定。(1)ヴィッセル神戸の収入増加額、(2)イニエスタの年俸、(3)ヴィッセル神戸以外のチームの収入増加額、(4)イニエスタが他の日本人選手の評価に与えるプラスの効果、とした。
(1)について、ヴィッセル神戸の2016年の営業収益は約38億6500万円とし、イニエスタ効果によって2割の増収を仮定。その額は7億7300万円となった。(2)が33億円。(3)について同名誉教授は、イニエスタが今季20試合に出場すると仮定し、観客の増加率を2割として観客増加数を7万536人と算出。サッカーファン1人が1試合で6000円を使うとして4億2322万円の増加があると見積もった。(4)については1億円と仮定した。(1)から(4)までを足すと45億9622万円。
この数字を用いて同名誉教授が「経済効果」を計算。ヴィッセル神戸は全国のスタジアムで試合をすることから影響は全国レベルに波及すると考え、総務省内閣府が作成した最新の全国産業連関表(平成28年発表)をもとに算出した結果、日本全体で99億2783万円の経済効果が見込めるとしている。
また、神戸を中心にした兵庫県と関西地域にこのうちの約8割の経済効果をもたらすと仮定すると、約79億4226万円の経済効果があると推定されるという。
ばく大な効果が期待できるイニエスタの移籍だが、同名誉教授は課題点も指摘。ひとつは2016年のヴィッセル神戸の営業収益は38億6500万円、総人件費が20億6800万円であったのに、イニエスタ1人に33億円も支払って、クラブの経営が成り立つのかということ。
もうひとつは、日本人の選手の平均年俸は約2000万円、最高年俸選手は1億5000万円であると言われているなか、イニエスタ1人に33億円を支払うことにより、もし、イニエスタが日本人選手と同程度の成績しか残せなかった場合、「日本人選手は年俸に関して非常なアンバランスな感覚を持つようになるのではないか」と指摘した。