1日3000食が売れる姫路の「えきそば」1949年発売以来、地元に愛され…

柴田 直記 柴田 直記
人気ナンバーワンの「天ぷらえきそば」=えきそばグランフェスタ店
人気ナンバーワンの「天ぷらえきそば」=えきそばグランフェスタ店

 兵庫県姫路市といえば白鷺城の愛称で親しまれている国宝姫路城が有名だが、グルメの舌をうならせる逸品がある。「えきそば」は姫路城への玄関となるJR姫路駅のホームでお手軽に食べられる立ち食いそば。だしの匂いに誘われて、列車を一本見送る乗客もいる。何を隠そう筆者もその口だ。黄色の中華麺に和風だしという組み合わせは他に類を見ない。現在、ホーム上で食べられるのは姫路駅山陽本線の上下線のみ。

 姫路名物・えきそばを販売しているのは、明治創業のまねき食品株式会社(本社・兵庫県姫路市)で1889年に日本初の幕の内弁当の発売を開始した老舗だ。1949年にえきそばを発売以来、地元の味として愛されてきた。まねき食品の総務部によると、多い日で3000食が売れる。また、「懐かしい味がする」「何回食べても飽きない」「麺とだしがミスマッチだけどおいしい」と常連客の声が届くという。

 2006年に同駅の山陽本線高架化が実現したが、その際、安全面を考慮してホームから立ち食いそばの店舗が消える計画があった。しかし「えきそば店舗がホーム以外にあっても意味がない」という熱心なファンがSNSで拡散したり、投書を行ったおかげで存続の危機を逃れた経緯がある。ちなみに高架化前、だしが特に濃くおいしいと評判だった播但線ホーム西側の店舗で、2008年12月21日の最終営業日にはファンが名残を惜しんで列を作った。

 日本初の幕の内弁当は昨秋、台湾に進出。招来日日便當(日本名・駅弁まねき)の店名で、台北駅のホームに登場した。「おかげさまで順調です」(同社総務部)と弁当の海外進出を軌道に乗せた同社だが、名物のそばでも新たな展開を始めた。6月から大阪・梅田の阪神百貨店で「えきそば」と、黄色の麺と米を使った「そばめし」を引っ提げて出店した。販売は3カ月限定ながら大阪にも販路を広げた。

 1949年当時、瀬戸物容器付きで一杯50円だったそばは現在、かき揚げやきつね、カレーなど、うどん・そば合わせて立ち食い用に10種類のメニューを用意している。なかでも一杯360円の天ぷらえきそばが一番人気だという。

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