新規のクライアントを開拓してパートナーになってもらい、いかにして自社(自分)の利益に結び付けるか…。営業活動は、自衛隊の戦闘部隊が敵部隊を攻撃する行動パターンとよく似ています。いざ攻撃を始める前に、混乱を防ぐため言葉の整理をしておきましょう。
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いよいよ敵に向かって前進を始める段階まで来たところで、ちょっと寄り道をして、雑学的なお話をしましょう。
「戦闘の目的」を一言で言い表すとしたら、どのような表現になるでしょうか。もちろん状況により戦う目的はそれぞれに異なるわけですが、すべての戦闘に共通の目的があります。それは「敵に勝ち、味方を守ること」です。負けるために戦うことはありませんし、そもそも味方を守る気がないのに戦う必要はありませんよね。どんな戦闘でも勝つために戦うし、味方を守ることが大前提にあります。
よく「戦略」とか「戦術」という言葉を耳にします。どちらも戦闘を行う際には欠かせない要素です。ビジネスの世界でも、よく「営業戦略」とか「販売戦略」という言葉を使うことがありますよね。
では「戦略」って、何でしょう? 戦略に対して「戦術」という言葉もあります。「戦略」と「戦術」の違いが、お分かりになりますか。
軍事用語としての「戦略」とは、全体的な方針のことです。戦いに勝つために、現有兵力を効果的に動かす計画と言い換えることもできます。大局的且つ長期的な視野に立って立案されるため、いったん決まったら簡単に変更できません。
これに対し「戦術」とは、戦略に従って部隊を実際にどう動かせばよいのか、現場での実践をいいます。
自衛隊の活動に当てはめて、例をひとつ挙げてみます。
1995年3月20日に、東京で起こった地下鉄サリン事件をご存じの方は多いでしょう。サリンを除去するため、自衛隊に「災害派遣」として出動命令が出ました。このとき出動した第32普通科連隊に対し第1師団長が下した命令が、すなわち「戦略」です。