鹿児島・指宿「ペンション菜の花館」の花子

九州温泉ねこめぐり

西松 宏 西松 宏

 そんな靖憲さんが、今年2月3日朝、食事の最中に突然倒れた。脳梗塞だった。すぐに救急車で運ばれ、一命はとりとめたものの、口に管を入れられ、安静の状態が2カ月ほど続いた。

 「主人が倒れたとき、花子の鳴き方は尋常じゃなかった。けたたましく鳴くという感じでね。その後、いつも主人と一緒に寝ているベッドをのぞき、主人がいないとわかると、それっきりもうベッドには寄り付かなくなってしまいました」(仁子さん)

 現在、3日に1度、仁子さんは鹿児島市内の病院で療養中の靖憲さんの見舞いに出かける。「おとうさんのところに行ってくるからね。ちゃんと待ってるのよ」と仁子さんが花子に声をかけると、「おとうさん」という言葉がわかるらしく、靖憲さんが帰ってくるかもと、仁子さんが宿に戻ってくるまで、同じ場所でじっと待っているそうだ。

 仁子さんは、そんな花子の姿を携帯で写真に撮り、病室の靖憲さんに毎回、「今日の花子よ。早くだっこしたいでしょう?」と話しかけながら見せている。

 「花子の写真を見せると目の色が一瞬変わるんですよね。当初は寝たきりでしたが、いまは言葉も少ししゃべれるようになり、リハビリをがんばっています。先生も『短期間でこんなに回復するなんて』と驚くほど。早く戻って、花子を抱きしめたいという気持ちが、何らかの影響を与えているのは間違いないと思います」(仁子さん)

 靖憲さんが入院して以来、予約客には全て断りを入れ、現在に至っている。「花子に会いたい」と定期的にやってくる常連客も多数おり、ペンションの再開が待たれる。「もうすぐ鹿児島市内から指宿の病院に転院する予定なので、時間に余裕ができそう。GWあたりから宿泊のお客様を少しずつまた受け入れていけたら思っています」と仁子さん。花子も花子のファンも、靖憲さんの復帰を心待ちにしている。

ペンション 菜の花館 鹿児島県指宿市山川岡児ケ水1723-3 電話0993-35-2007

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