労基署の是正勧告 放置すると刑事罰、ブラック企業の烙印

元アイドル弁護士が解説

平松 まゆき 平松 まゆき
複数の芸能事務所が労働基準監督署から相次ぎ是正勧告を受けた(tayukaishi/stock.adbe.com)
複数の芸能事務所が労働基準監督署から相次ぎ是正勧告を受けた(tayukaishi/stock.adbe.com)

 Q 是正勧告に従わない企業はどうなるのですか?

 A 是正勧告それ自体は行政指導ですから法的な強制力はありません。しかし是正勧告に繰り返し従わない悪質で重大なケースについては、検察庁に送検して刑事司法手続きの下に置かれます。労働問題で刑事罰というのはイメージしておられない使用者も多いようですが、明文で懲役や罰金が定められており、過去5年分の報告を平均すると年間約1000件もの送検が行われています。また、これに加えて近年は厚生労働省のホームページ上にて、送検された企業名や違反内容の公表も行われるようになってきました。いわゆるブラック企業の烙印ですね。

 Q 芸能事務所で違法な長時間労働が多発するのはなぜでしょうか。元アイドルというご自身の経験で思うところがありますか?

 A タレントや芸人さんをはじめ、芸能界で働く皆さんは特に駆け出しの頃は少しでも多く仕事をして世に出たい、そのためには過労も厭わないという心理状態になると思います。その気持ちは彼らを一番近くで見て支えているマネジメント側も変わらないはずで、自分の体やプライベートとのはざまで苦しいジレンマを抱えるのだと思います。また、芸能界は「定時」を観念することが業態上困難ですから、そもそも労働時間の概念になじみにくいのも現実です。いずれにしても芸能は夢を与えるお仕事ですから心身が資本です。芸能界で働くすべての皆さんの労働環境に配慮した場であってほしいですね。

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