ニュースなどでもよく耳にするセクハラとは、セクシャルハラスメントの略で性的な嫌がらせのことをいいます。外資系企業でセクハラ被害にあったシングルマザーの梨花さん(30代・会社員)は、社内で助けを求めても「自分の方が白い目で見られるのではないか」と悩み、退職へと追い詰められたといいます。
――セクハラをしてきた男性はどのような方でしたか
セクハラをしてきた男性は社内で最年長の男性社員(Aさん)でした。最初はとても紳士的で仕事も丁寧に教えてくれたり、困っていると仕事を手伝ってくれたりする方でした。社内で一番明るく、フレンドリーで誰からも好かれ慕われている男性でした。
――どのようなセクハラ被害に遭いましたか
まず、勤務中にスマホのカメラで隠し撮りをされていました。勤務中にAさんからLINEがきたので確認すると、私の写真が送られてきました。勤務中いつ撮られたものかわからなかったので驚きました。最初はAさんの悪ふざけ程度にしか思っていなかったのですが、どんどんその悪ふざけがエスカレートしていきました。
また、会社の書庫で抱きつかれました。私が一人で書庫に行ったときAさんが後をつけてきて、いきなり「ここには監視カメラがないで」と言い出し、無理やり抱きついてきました。
こちらが「やめてください」と言ってもAさんの暴走は止まらず「声を出しても部屋には誰もいない」「チューしようや」「なんで嫌がるん?」「俺のこと好きやろ?」「シングルマザーが、仕事失くなったら困るやろ?」などと言われ、なかなか離れてくれませんでした。
そのときは必死で逃げだしましたが、今思い出しても気持ちが悪くてとても怖かったです。
Aさんの要求はどんどんエスカレート
――セクハラ被害はその後も続きましたか
Aさんは勤務中、私の行く先々へついてきました。ついてきては抱きつかれ、キスをせがまれ、「監視カメラありますよ」と伝えても「かまへん」と開き直るようになりました。
Aさんから時には「膝枕をしてほしい」「よしよししてほしい」「子どもより僕を優先してほしい」とお願いをされるようになりました。もちろんお断りしましたが、要求はエスカレートするばかりでした。
Aさんはしだいに「性的な関係」を要求してくるようになりました。毎日卑猥な言葉をかけてくるだけでなく、卑猥なことを要求され、勤務中に2人しかいないところではズボンを脱ぎ、下着姿になることもありました。
人が来るのですぐにズボンを履くように何度もお願いをしましたが、なかなか履いてくれなくてとても困りました。その一方で社内の雰囲気的には、Aさんは下着姿になったところで誰も驚かない、笑って済まされてしまうような存在でした。
Aさんはお酒を飲みながら仕事をすることもあったので、セクハラも酔っ払いのしたこととして笑って済まされていました。
――どなたかに相談しましたか?
社内の信頼できる女性社員に相談をしましたが「Aさんに注意できる人は誰もいない」「社内ではAさんを慕う人ばかり。Aさんとは立場も違うし誰も注意することはできないんじゃないかな」と言われました。
Aさんのセクハラや悪ふざけは社内でもとても有名で、被害に遭う女性は決まってシングルマザーや若い独身女性でした。
よく、助けを求めたらよかったのに、証拠を掴んで訴えたらよかったのにと言われるのですが、やはり、Aさんとは立場が全く違うので、私がいくら社内で助けを求めても私のほうが白い目で見られるので言えませんでした。退職するしか道は残されていないと思いました。
弱みに付け込むセクハラ
立場の弱い女性を狙ったセクハラは極めて悪質です。シングルマザーのように仕事を失ったら生活ができなくなることをわかっていて、弱みに付け込む悪質な男性が世の中には存在します。
セクハラ相手に「やめてください」とはっきり伝えられる女性もいますが、立場的に言えない女性も多くいます。社内で相談しにくい場合は、厚生労働省や法務省といった、公的機関が設置している相談窓口もありますので、ぜひ活用してください。
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【セクハラ相談窓口の例】
▽厚生労働省 ハラスメント悩み相談窓口
https://harasu-soudan.mhlw.go.jp/
▽働く人の「こころの耳相談」厚生労働省
https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/
▽全国の労働基準監督署
https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/roudoukyoku/index.html