架空の外貨両替話を持ち出して出資金として現金をだましとった詐欺の疑いで昨年8月に栃木県警に逮捕された大手旅行会社JTBの元子会社社員、田村泰暢被告(50)が29日に懲役5年6月(求刑懲役7年)の判決を受けた。この事件を取材してきた元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は30日、デイリースポーツに対し、多くの被害者の声をリポートした。
判決などによると、JTB関東の社員として在職時の2013~16年、「JTBのドルの両替で、手数料の差額を受け取る仕組みがある」などとうそを言い、栃木県と群馬県に住む男女計6人から現金計7500万円をだまし取った。栃木県警は起訴されなかった分を含め、約50人から計約24億円を集めた疑いがあるとして捜査した。
小川氏は「2年ほど前から被害者との連絡を絶った後も、田村被告は韓国のカジノに複数回行っていた。それは本人も認めています。そのことに対し、被害者から『配当金も払わず、逃げている時にカジノに行くなんて反省のかけらもない。実刑を受けて罪を償うことはもちろんだが、私たちのお金を返して欲しい』といった切実な声を聞いています」と明かした。
「返済不能」としながら、韓国でカジノに興じていたということから、被害者の間では「どこかに金を隠しているに違いない。海外の口座などを調べて欲しい」という声があるという。
小川氏は17年4月から被害者の相談を受け、同年11月に本人を直撃取材。当初、詐取した金額の使い道について「ジュース代程度」と話していたが、小川氏から海外のカジノに通っていた事実を突きつけられると「ソウルや釜山のカジノに行っていた。バカラで1回に数百万円を賭けていた」と認め、「期限が来たら(顧客に金を)返すつもりだった。現在は返済する能力がない」と頭を下げた。だまし取った金の大半を韓国のカジノなどで使い、一晩で数千万円をかけるなど億単位の豪遊をしていたという。
小川氏は「本人自ら出頭したのですが、被害者には1円のお金も返していない。被害弁償の見込みもないまま、被害者はその怒りをどこにぶつけたらいいのか分からない状態です。隠しているお金があるなら返して欲しいという声が強い」と思いを代弁した。