夫婦げんかのはてに勢いあまってつい相手の物を勝手に捨ててしまったという人は決して珍しくないだろう。夫が集めているアニメのフィギュア、妻が集めているアイドルグッズ。怒りに任せて「こんなガラクタ!」と処分したら夫婦間であっても違法行為に問われるのか、問われないのか。日本テレビ「行列のできる法律相談所」に出演する北村晴男弁護士に聞くと、夫婦間であっても器物損壊罪に問われる場合があるという。とりわけ離婚が視野に入っていれば慎重さが必要のようだ。
法は家庭に入らず
「勝手に人の物を壊したり捨てたりすると器物損壊罪に問われます」と北村弁護士。刑法261条により3年以下の懲役または30万円以下の罰金と定められている。ただし、同罪は親告罪であるため処罰のためには被害者による告訴が必要だ。いくら大切な物を勝手に捨てられたからといって、配偶者を告訴することは多くの人にとってハードルは低くないだろう。
人の所有物を初めから捨てる目的で手に取り、実際にすぐに捨てたら上記のように器物損壊罪に該当する。一方で、人の所有物を売却する目的で取ると窃盗罪に該当する。窃盗罪は刑法235条に規定され、10年以下の懲役または50万円以下の罰金となっており器物損壊罪より重い。利欲的動機に基づくもので領得罪と呼ばれ、単に人の物の価値や効用を損なう器物損壊罪より悪質性が高いとされる。窃盗罪は親告罪ではないために告訴がなくても捜査対象となる。
「ただし」と北村弁護士は重要事項を付け加えた。「配偶者、直系血族または同居の親族との間で起こった窃盗罪は刑が免除されます」。「親族相盗」と呼ばれ、親族間の財産関係に関する問題は親族内部において解決させるべきという政策的考慮に基づいているという。「法は家庭に入らず」という法諺(ほうげん)の由来でもある。ちなみに器物損壊罪には親族相盗は適用されない。