「お母さん、私のお年玉で沖縄旅行したの!?」娘の貯金10万円を無断で使った母…法律的にセーフ?アウト?【弁護士が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

来春中学生になる娘を持つ専業主婦のAさんは、ある日、学生時代の友人から声がかかり、2泊3日の沖縄旅行に行くことになりました。普段の生活費は夫の給与によって不自由のない暮らしをしていますが、旅行ではちょっとリッチな経験をしてみたいと思い、夫が許可した金額以上のプランを立てました。

この旅行の予算をどうやって捻出するか悩んでいたとき、Aさんは娘のお年玉貯金を思い出します。約10年間預かってきたお年玉が30万円ほど貯まっており、Aさんはそこから娘に無断で10万円を借りることにしました。

旅行中、Aさんは贅沢なホテルに宿泊し、高級レストランで食事を楽しみました。マッサージや観光ツアーにも参加し、充実した時間を満喫しました。友人たちと久しぶりに会い、青春時代の思い出話に花を咲かせ、心から楽しんだのです。

しかし旅行から帰ると、娘にお年玉貯金を使ったことがバレており「お母さん、私のお年玉使ったでしょ!」と詰め寄ってきたのです。娘は自分が大切に貯めてきたお年玉を勝手に使われたことに強い憤りを感じ、「家族とはいえ罪になるよ!」と主張します。

実際に娘の言うように、Aさんは罪になるのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに伺いました。

ー子どものお年玉で旅行に行くと罪に問われますか

お年玉の所有権は年齢に限らず子どもにあります。ただ子どもが成人するまでは、親(親権者)が管理するのが原則です。民法824条にて「親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に対する法律行為についてその子を代表する」と定められており、自身のお金であったとしても、親の許可なくお年玉を容易には使えないのです。

かといって親が勝手にお年玉を使えるかというと、そうではありません。子どもの許可を得ず遊興費などに使用すると、財産管理権の濫用に当たります。形式的には横領罪が成立する可能性があるものの、刑法第244条に定められた「親族相盗例」にあたると考えられ、親による横領行為は刑が免除されるため、実際に罰せられることはありません。

ー子どもにお年玉を返すタイミングはありますか

子どもが成人するまでは、親は子どもの利益のために適切に管理する義務があり、自由に使ってよいわけではありません。

子どもが成人すれば、親の財産管理権が消滅するためお年玉を子どもに返さなければなりません。ただ子どもが5年間返還を求めずにいると時効によって権利が消滅するので注意が必要です。子どもは親に対して、口頭での要求、書面での要求、法的手続きのいずれかで返還の意思を示す必要があります。

◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないといわれる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。

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