ワクチン保管の冷凍庫や冷蔵庫、各地で電源プラグが抜けるトラブル 故意に抜いたら犯罪になる?

竹内 章 竹内 章

新型コロナウイルスワクチンを保管する冷凍庫や冷蔵庫の電源プラグがコンセントから外れるトラブルが5月下旬以降、相次いでいます。兵庫県内では神戸市、芦屋市、猪名川町でプラグが抜けていることが見つかり、計400回分のワクチンが廃棄されました。

大阪府堺市では、集団接種会場のホテルの冷蔵庫の非常用電源のスイッチが故意に切られた可能性もあるとみて、大阪府警と協力し原因を究明すると報じられました。

一方、SNSでは「プラグを抜こう」というハッシュタグ付きの投稿が見受けられますが、各地のトラブルと関連は不明です。仮にプラグが故意に抜かれた場合、どのような罪に問われるのか。弁護士法人天音総合法律事務所の正木絢生代表弁護士に聞きました。

―何者かによって故意に抜かれたとしたら、どのような罪に問われますか

「ワクチンは低温管理することが必須のものであり、冷蔵庫のプラグを抜くことにより低温が維持できなくなり、その結果ワクチンを破棄せざるを得なくなったということであれば、器物損壊罪が成立します。また、ワクチン管理はワクチン接種という自治体の業務を行うために行われているので、偽計業務妨害罪の成立もありうるかと思います」

―民事的な責任は

「損害賠償については、所有者である自治体ないし国からワクチンの費用について請求される可能性や、代替会場の用意や人員確保が必要となった場合、その費用について実施主体から請求される可能性が考えられます」

―「#プラグを抜こう」とツイートするなど、煽ったり拡散したりした場合、何らかの罪に問われる可能性はありますか

「ただ単純に煽ったり、拡散したりといっただけでは、煽り行為等を処罰する特別の規定等もない以上、罪に問うことは難しいでしょう」

―ツイートが特定の接種会場を記述するなど、行為が具体性を持つ場合はどうですか

「特定の人物に対してプラグ抜き行為を行うように唆したり、そのような行為をしようと考えている人物を、それと知りながら煽った(応援した)というような場合は、偽計業務妨害ないし器物損壊罪の教唆や幇助に問われる可能性があります。

教唆犯は特定の事件の実行を唆すことを罰するものなので、特定の会場について電源を抜くように煽ったりして実際に抜かれた場合、器物損壊罪や偽計業務妨害罪の教唆、さらにその煽り行為自体が偽計業務妨害罪になりうることが考えられます」

 ◇ ◇

正木絢生(まさき・けんしょう) 東京・日本橋にある「弁護士法人天音総合法律事務所」の代表弁護士。第一東京弁護士会所属。消費者トラブルや借金・交通事故・離婚・相続・労働問題など民事案件を主に扱う。メディア取材など実績多数。事務所Webサイトはこちら https://amane-law.or.jp/

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