相手をさらに詳しく知って、いよいよ攻撃へ

元自衛官が解説・営業に使える戦闘技術

平藤 清刀 平藤 清刀
敵陣地への侵入を阻む障害物。攻撃の前には、まだ敵のことを詳しく知る必要がある
敵陣地への侵入を阻む障害物。攻撃の前には、まだ敵のことを詳しく知る必要がある

 さて、斥候は偵察と同様、生還して情報を持ち帰ることが使命です。ですから、運悪く敵に見つかったら、できるだけ戦闘を避けてその場を離れます。とにかく生き延びて、情報を持ち帰ることが最優先です。

 指揮官は、斥候が持ち帰ってきた情報に基づいて作戦を立てますから、斥候兵は見たまま・聞いたままを指揮官に報告しなければなりません。「たぶん……」とか「おそらく……」は禁物。たとえば敵陣地の目前で、話し声を聞いたとします。声の主は見えません。話し声の感じから「たぶん2~3人じゃないかな」と思っても、報告するときに「たぶん2~3人いると思います」では斥候兵失格です。このとき知り得た事実は「複数の敵兵が話す声を聞いた」ということだけです。繰り返しますが、報告はあくまで「見たまま・聞いたまま」が鉄則です。

 ビジネスの世界では、よく「キーマンを探せ」といわれます。「この人を通さないと話が決まらない」という影の実力者がいる場合、形式上の管理職にいくら接触しても話はなかなか進みません。担当部署の課長よりも、現場をよく知るベテラン係長の判断がすべてということがよくあります。つまりこれが主攻正面であり、戦力を集中するポイントということになります。

 作戦が決まったら「命令下達(めいれいかたつ)」があり、いよいよ前進開始です。指揮官が立てた作戦を部隊に伝えることを命令下達といいます。すなわち営業課長から「GO」が出て、細々した指示が出される瞬間だと思ってください。実際の命令下達はもっと複雑ですが、それを書き始めると収拾がつかなくなるので、ごく単純にしています。

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