グリーンの色合いからは想像もできない、コーラの香りと強い炭酸ののど越し。しかし、後からじわっと緑茶の風味が腹の底から伝わってくる。瓶の原材料表記を見ると、「緑茶(国産)、果糖ぶどう糖液糖/炭酸、香料、葉酸」などと書かれている。緑茶液を原料に、コーラの香料を加えた炭酸飲料だった。
製造は埼玉県秩父郡の業者だが、その商品名からターゲットは東京である。店主は「この界隈で販売しているのはうちだけだと思います」と説明した。
瓶の裏に「販売者」として表記されていた「江戸みやげ屋」(江東区)に問い合わせたところ、販売開始は昨年7月という。SNSなどで築地場外市場での販売が確認されたが、担当者は「今は築地では売っていないと思います」と指摘。清澄以外での販売については把握されていなかったが、「東京のご当地ドリンク」として今後も販売されていく。
そこで連想したのが、神戸の“ソウルドリンク”と称される「アップル」。昭和テイストを残した小瓶の形状もそうなのだが、いずれも大手メーカーで流通している商品ではなく、地場産業の製品であり、派手な宣伝もなく、地道に販売されている“立ち位置”が共通していると思った。
アップルが神戸のご当地ドリンクといっても、その存在を知らない神戸市民も少なくない。ちなみに、アップルという商品名でありながら中身は黄色い“みかん水”。記者はここ1~2年、神戸に立ち寄った際に、下町の駄菓子屋や個人営業の喫茶店、立ち食いの串カツ店など限られた“穴場”スポットで飲むことができた。いずれも、地元独自の飲み物文化を残そうという意志を各店に感じた。
東京コーラも同様に、販売エリアである江東区に住んでいても知らない人の方が多いだろう。昭和から愛飲された神戸のアップルに比べ、東京コーラは誕生からまだ1年4か月。地域に根差した独立独歩の清涼飲料として、平成の終わりから新たな歴史を積み重ねていくことになる。