それは屋形船での忘年会にゲストで呼ばれた時のことだった。アントニオ猪木のものまねをするため、もちろんパンツははいていたが、上半身は裸だった。「それも衣装ですから」と小猪木。それ以外で身に着けたものは、細長い赤いマフラータオルだけである。
「船には控室がなく、甲板で待っている間の寒かったこと。あれはつらかったです。体が冷え切っていたので、(宴会場に)入場してお客さんと握手した時に『人の手は温かい』と実感した」という。暖房がきいた船内の宴会場と、川面で寒風にさらされる甲板とでは、まさに天国と地獄。小猪木は「30分の出番だったのですが、部屋に少しでも長くいたくて1時間以上やりました」と振り返った。
小猪木の場合は特殊なケースかもしれないが、「忘年会と服装」にまつわる思い出は人それぞれあるだろう。「特にない」という人は幸せである。服装に気を使うことなく忘年会を楽しめたということだから。というわけで、今年も夜の巷(ちまた)で悲喜こもごも、忘年会のひと模様が繰り広げられていく。