3月11日、米ニューヨーク株式市場で、米航空機大手、ボーイング社の株価が急落した。以降、同社の株価は回復する気配を見せていない。この株価下落の理由は明白だ。
その前日に、エチオピアで同社の最新鋭機である「737MAX」が、墜落事故を起こしていたからだ。この「737MAX」に関して言えば、5カ月前にもインドネシア沖で墜落事故を起こしていて、相次ぐ事故を受けて機体に何らかの欠陥があるのではないか、という見方が広がっており、ドイツ、フランス、オーストラリア、インドネシア、中国などの国の航空当局が、自国の領空での同型機の飛行禁止措置に踏み切った。
ボーイング株を巡って、まさに「イベントリスク」が襲ったと言えよう。
ところが不思議なことに、この一件を受けてボーイング株を除いて株式全体としては「買い」という見方が、関係者の間でジワジワと広がりつつあるというのだ。なぜそうなるのか、順を追って説明していこう。
ここでは中国の動きが、カギを握っているのだという。中国は今後10年以内に、米国を抜いて世界最大の航空機需要国になることが見込まれている。現在、中国はボーイング社が年間に生産する航空機の4分の1も購入しているのだという。
そしてボーイング社の試算では、中国は今後20年間で同社製の航空機7700機、金額ベースで1兆2000億ドルもの航空機を購入すると見込んでいる。
しかし、その中国は、早々に「737MAX」の運航停止を決めてしまった。加えて航空機の発注先をボーイング社から、欧州のエアバス社へ大きくシフトさせるのではないかという見方が広がっている。
そもそも航空機産業は、米国の主要産業。もし、そんなことになってしまったならば、米国経済へのダメージは大だ。中国にそうさせないためにも、米国は米中貿易戦争で中国に一定の配慮を見せるだろう。結果的に世界経済は安定化の方向に向かい、株は「買う」ということになるというのだが、さてどうなるだろうか。