嵐の「ポジティブな活動休止」経済から見た戦略性

須田慎一郎のマネー論

須田 慎一郎 須田 慎一郎
 嵐が2020年での活動休止を発表
 嵐が2020年での活動休止を発表

 人気グループ・嵐が活動休止を発表して以来、連日、さまざまな報道が過熱している。ジャーナリスト・須田慎一郎氏は30日、デイリースポーツの取材に対し、その経済効果と損失を指摘した。

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 昨年の安室奈美恵さん引退興行でチケットやCD等の売り上げなど、その経済効果は約200億円と指摘されたが、嵐の活動休止による経済効果はその数字を大きく上回ることが明らかだ。

 2020年12月末まで残り2年間の経済効果は、興行収益に限っても1200~1300億円とみている。内訳は、ドーム級会場でのコンサートなどイベント収入で約700億円、CDやグッズ等の売り上げで約500億円の合計となる。

 ジャニーズ事務所において、嵐のような人気グループになると、チケット購入はファンクラブ会員を対象とした抽選制となる。当選して初めて買うことができる。対象が会員に限定されているため、コンサートやイベントに行きたい人は入会しなければならないシステムになっている。そして、会員1人がチケットに当たる確率は「4年に1回」と言われている。

 だが、嵐の“活動休止ビジネス”の期間は2年。チケット当選確率を「2年に1回」にしなくてはいけなくなるため、最低でも2倍のイベントを打ってくる可能性が出てくる。

 全国から来場するファンの交通費やホテル代、飲食費などはシミュレーションがないので計算が付かないが、少なくとも1人あたりがチケットやグッズ等の購入といった興行そのものにかける金額と同額にはなるだろう。イベント数が倍になれば動員数も倍になる。トータルとしての経済効果は冒頭で述べた1200~1300億円の倍以上となり、3000億円近くになってくるとみられる。

 一方で活動休止後の経済損失も大きい。

 ジャニーズ事務所は近年、IT化を進め、会員限定サービスによる組織運営でルールを徹底し、チケット転売による値崩れを防いできた。「プラチナチケットは永遠にプラチナチケットである」という特権が会員の囲い込みにつながった。そうしたビジネスモデルを積み上げてきたが、それができるのも嵐だからこそと言えるだろう。だが、嵐に匹敵する後続グループがいるかというと、現状では見当たらない。今後、後継者の育成が課題になってくるだろう。

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