芸術と地場産業がタッグを組む街・明石 ピアニストが唯一無二の公演を継続中

北村 泰介 北村 泰介
「ときはいま」公演のポスター
「ときはいま」公演のポスター

 2017年11月3日の第1弾では明石城のやぐら横の展望台にグランドピアノを運び、明石5漁協の組合長が生きた魚をその場で競(せ)りにかける演出を敢行。牧村も人魚として競りにかけられた。明石で海苔の研究所、青果市場、神社などを回り、漁船に乗り、地元の人との出合いを重ねた牧村だが、「間違いなく一番の衝撃」が競りだったという。

 「年間100以上のコンサートで劇場に通っていても、あれだけのライブパフォーマンスを見たのは初めてでした」。その衝撃とコペンハーゲンでの体験がリンクした。「アンデルセンと明石を結ぶキーワードが人魚。これは自分にしかできないと」。第1弾での度肝を抜いたパフォーマンスにつながった。

 18年3月の第2弾では築107年の中崎公会堂で開催。6月の第3弾は兵庫県水産会館で催され、聴覚と視覚だけでなく、水槽の中のタコを調理するなど、地元食材を通して味覚、嗅覚、触角を加えた五感を刺激した。

 9月、明石港の近くにある岩屋神社で行われた第4弾を鑑賞した。神事と共に、人魚の牧村がドビュッシー、サティ、坂本龍一などの楽曲をピアノで奏でつつ、牧村の舞が水音と絡み合う。台風接近による激しい雨の中、観客を車で送迎した明石浦漁協の戎本裕明組合長は「金山記者と牧村さん、“パシリ”の自分との三人四脚です」。地場産業とのタッグが定着していた。

 19年1月19日には初めて明石を離れる第5弾「青の玻璃球(はりだま)子午之巻」を神戸新聞松方ホールで開催。「今年の夏、35日間の欧州ツアーで初めてホームシックにかかった。『帰りたい』と思った場所が明石の風景だったことに自分でも驚いた」という牧村。「こんなに面白いプロジェクトはないので、つなげていきたい」。第5弾は総集編であると同時に新たな挑戦の始まりだという。

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