血管の中に空気が大量に入り込むことにより、脳、肺、心臓などの重要な血管がつまることがあるのです。最悪の場合は死に至ります。冒頭の痛ましい事件も死因は窒息でした。肛門から空気を入れられて内臓が損傷してしまい、漏れた空気が体内にたまって、最終的に肺を圧迫したのでしょう。以前、美容のために流行した高圧浣腸などでも痛ましいケースがあったと聞いています。
また、性的嗜好(しこう)から肛門に異物を入れて取れなくなり、来院される人もいます。私は、20cmのヘアームースの缶を取り出した経験があります。その時は、腸が破れずに済んでよかったのですが、破れていれば緊急手術となり生命に及んでしまう危険な行為でした。
繰り返しになりますが、このような行為は、非常に危険であるということを改めて理解して頂きたいと思います。以前、バラエティー番組でお尻からガスを入れて笑いをとるのを見たことがあります。それらを真似て悪ふざけで空気注入したのであれば、医師の立場からすると、とんでもない“暴挙”だと言わざるをえません。
液体や空気など、一見すると身体に大きな害がないように思えてしまうのかもしれませんが、通常の生活においてあり得ない行為をすることは本当に危険なのです。ほんの悪ふざけ、いたずらで多くの人の人生が変わってしまう可能性がある。そのことを忘れないでほしいと願います。