医者1年目は、仕事が忙しい上に、睡眠時間があまり取れないために精神状態はかなりきつかったです。私ではありませんが“幻覚”に襲われた先輩もいました。頭脳明晰で、人徳もあり、非常に優秀な先輩でしたが、土曜日の夕方に久しぶりに病院を出ると酒屋さんの店頭に並んでいる焼酎のビンが追いかけてきた、というのです。
その先輩は、身寄りのない老婆が退院後に「銀座のお店であんみつを食べたい」と言うと、自らその人を背負って、銀座まで連れて行き、あんみつを食べさせてあげたという「伝説」を持つ大変、徳の高い人です。これほど素晴らしい先生だからこそ、人よりも強い責任感のもとに仕事をこなし、他人に重圧の愚痴をこぼすわけでもなく、黙々と仕事をこなし続けた結果、そういう極限状態に追い込まれたのだと思いました。
当時は本当にそんな感じでした。私の友人が大阪から上京して、久しぶりに会えたのにもかかわらず、会った瞬間に病院からポケットベルで呼び出され、たった5分でお別れしたこともありました。他にも人を長時間待たせてしまったり…などのエピソードは多いです。当時は携帯電話もないですから連絡もままならないのです。今では、考えられないことですよね。
昔を思い出しながら、コラムを書いているとあっという間に午前が過ぎてしまいました。これでは、明日も休みですが、病院にきて雑用ですね(苦笑)。