「先生は気楽なものですね。私達は病気と闘っているのに」休暇を取る医師に、患者が放った言葉に衝撃 「医師も一人の人間だから…」投稿した思いは

金井 かおる 金井 かおる

 現役医師がSNSに公開した体験談が大きな話題になっています。投稿したのは急性期病院で消化器外科医として勤務する「コロン小林@外科医」さん(@osanpo_surgeon)。2018年からツイッター(現X)に医師としての日常を発信しており、今回の投稿も数カ月前に高齢の女性患者が放った言葉を取り上げました。

 「夏休みとるから、外来患者さんに不在の旨を告げた。『私達が病気と闘ってるのに、先生はお休みとるんですね。気楽なものですね』と返された。こういうことで心が折られていくんだろうなぁ」(コロン小林@外科医さん投稿から引用)

 投稿を読んだユーザーの間では驚きが広がっており、「衝撃です」「そんなこと言う患者さんがいるとは」「夏休みは先生の権利です」「休んでください」などの声が寄せられています。医療従事者からの反応も多く、「きつい言葉ですね」「私も言われたことあります」「看護師ですがよく言われます」「元気じゃないと診療できない」などの声も上がっています。

言われた瞬間「むっとしました」

 コロン小林@外科医さんに話を聞きました。

──患者さんの言葉を聞き、どう思った。

 「むっとしましたね。面と向かってここまで言われるとは思っていませんでした。ここまで言われる筋合いはないんじゃないかと思いました」

──患者さんに自身の休みを伝えづらい空気はある?

 「あります。不在だけ伝えるということもしていましたが、他人の口から患者さんに伝わったりすることもありますし、最近はあまり隠さずに正直にお話しするようにしています」

──それはなぜ。

 「医師としての完璧な人間性よりも、病気と闘う患者さんのサポートをする一人の人間であるということを理解して欲しいという気持ちもあります。消防隊員や警察官が勤務中にコンビニ利用でクレームが来ることもあるご時世なので、脇が甘いと言われれば、そうなのかもしれません」

「医師も一人の人間、家族もいます」

──今回の出来事を通じて、医師として伝えたいことは。

 「医師も一人の人間であり、医師以外の顔を持っています。家族もいます。そういったなかで、一人の人間として認めていただきたいとは思います」

 「少し話は変わりますが、医師や教師などの職種の方に完璧な人間性を求める気持ちはわかります。ただ、周囲からの尊敬の念が薄れつつあることも時代の流れから感じています。尊敬はしないけれども、完璧な人格を求めることには矛盾を感じています。医療者を尊敬すべきだと言うつもりはなく、一人の人間として認めて欲しいと思っています」

     ◇

 医師の働き方をめぐっては、2024年4月から勤務医の残業時間の上限を設ける新制度「医師の働き方改革」がスタートします。

 医師の長時間労働や不十分な労務管理、医師への業務集中を見直し、労務管理の徹底や、労働時間の短縮により医師の健康を確保すること、質・安全が確保された医療を持続可能な形で患者に提供することーーなどを目標としています。

 新制度について、コロン小林@外科医さんは「医療の質や安全性の担保のためには、しっかり休暇がとれるということは大事だと思います」とした上で、「ただ現状そのような余剰人員がいないことが多く、苦しい人数で仕事をこなしている病院ばかりというのが実情だと思います。見た目のつじつま合わせで終わってしまうのではないかと危惧しています」と話しました。

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