お正月がやってきました。各地に初詣に出かけて、開運祈願や家内安全、厄除開運、健康長寿など、さまざまな願い事をされる方も多いと思いますが、まずは「お屠蘇(おとそ)」を飲んで、長寿健康を願ってみるというのはいかがでしょうか。お屠蘇の歴史や効能について、やすらぎ内科院長(さいたま市西区)の新谷卓弘先生に伺いました。
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-お屠蘇の歴史や意味を教えていただけますか。
「屠蘇散(とそさん)は、麻酔薬(麻沸散:まふつさん)で世界最初に手術を行った名医・華佗(かだ、141~208年)によってつくられた漢方薬とされ、悪性の流行り病(今でいうインフルエンザなど)を予防するためのものでした。
日本では第52代嵯峨天皇の弘仁年間(809~823年)に、初めて宮中で元旦にふるまわれました。日本最古の医学書である『医心方』(丹波康頼著、984年発行)に8種類の生薬で構成された屠蘇散が記載されています。その後、時代とともに公家から武士へと伝わり、江戸時代には一般庶民の正月行事として定着してまいりました。
お屠蘇には、邪氣を屠(ほふ)り、心身を蘇(よみがえ)らせる、すなわち、悪鬼・疫病を治し、邪氣・毒氣を払うという意味があります。さらに、一人でこれを飲めば一家に疫なく、一家でこれを飲めば一里に疫なく、元旦にこれを飲めば一年中病気にかからないと信じられてきたのです」
-お屠蘇は、普通の日本酒とどう違うのでしょうか。
「お屠蘇は、延寿屠蘇散とも言われ、日本酒やみりんに5~9種類の生薬からなる屠蘇散を漬け込んだお酒が『お屠蘇』です。ですから、漢方生薬が配合されていないアルコールと水分だけのお酒とは味も効能も異なってきます」