脳梗塞にかかってもお酒は飲める? 発症後の正しいお酒との付き合い方について 医師に聞く

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 脳梗塞の発症後は治療やリハビリを続けていくことになりますが、食事面はこれまでと同じように過ごせるのか? なかでも、発症前と同じようにお酒を飲むことはできるようになるのか、気になっている方は多いかもしれません。そこで今回は、脳梗塞発症後のアルコール摂取について、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。

――脳梗塞の治療が終わった後、お酒は飲んでも良いのでしょうか?

治療が落ち着いた場合には、お酒を飲んでも問題ありません。脳梗塞を患った方の多くが血圧が高くなっているため、発症後には血圧を下げる治療を行います。この場合、急激な血圧低下は身体に悪影響を及ぼす可能性があるため、少しずつ下げていきます。脳梗塞発症から約2〜3か月ほどが経ち、治療が落ち着いた場合には少しはお酒を飲んでも良いのではないでしょうか。

――今後お酒を飲む際、どのようなことに気をつけるべきでしょうか?

やはり飲み過ぎは身体に良くないため、飲む量には気をつけていただきたいですね。この場合に指す“飲み過ぎ”は、ビールに換算すると約500cc、日本酒であれば1合まで、ワインの場合には約2杯が目安となります。

――飲む量に気をつけなければいけないのは、アルコールの利尿作用が影響するからでしょうか?

いいえ、アルコールそのものが及ぼす影響からです。アルコールを摂取すると顔や体が赤くなりますが、これは血管の拡張が原因とされています。その後アルコールが引いてくると血管は収縮しますので、アルコール摂取により血管に負担がかかってしまうのです。ほかにも、飲酒はさまざまな炎症の原因になるともいわれています。身体のどこかが腫れている時にお酒を飲むと、腫れた部分がさらに痛むことがあるかと思いますが、これも飲み過ぎが原因となっているんです。

――寝酒はどうなのでしょうか?

就寝前にお酒を飲むと寝つきが良くなるといわれていますが、実際はまったく逆で、飲酒は睡眠の妨げになるのだそうです。飲酒後いったん眠たくはなるのですが、その後かえって目が覚めてしまうんです。そのため、夕飯時に少量のお酒を晩酌として飲んでいただくのが良いかもしれませんね。

――お酒は良くないというような話をしていましたが、上手に付き合えば良いのですよね?

そうですね。少量の飲酒であれば、脳梗塞発症のリスクを下げるといわれています。さらに、秋田県立脳血管研究センターの調べによりますと、少量のお酒を摂取している患者さんの方が脳梗塞発症後の回復具合が良かったそうです。つまり、お酒は決して悪いものというわけではなく、正しく適量を飲んでいただくのが良いといえますね。

――さまざまな種類のお酒がありますが、お酒によって違いはあるのでしょうか?

お酒の種類による影響の差異は特にありません。たとえば、ワインには抗酸化作用のある物質が含まれているといわれていますが、かなりの量を摂取しない限りは作用しないものですので、お酒の種類ではなく、摂取量で判断していただいて問題ありません。

◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科
 

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