俳優・春田純一(63)はスーパー戦隊シリーズ「大戦隊ゴーグルファイブ」(1982年)でゴーグルブラック、「科学戦隊ダイナマン」(83年)でダイナブラックを続けて演じ、演劇では89年の「今日子 幕末純情伝予告編」から、つかこうへい作品に欠かせない存在となった。
現在も多くの映画やドラマで活躍する一方、約3年前からつか作品を中心に舞台の演出も手がけるようになり、今年はついに初の映画監督作品「烏、蟷螂。」を完成させた。
映画の製作は、神戸の劇場「シアター・エートー」支配人で女優の大下順子から監督を依頼され、春田が「大人もの」を提案してスタート。春田と大下が夫婦の愛を演じており、約2年間かけて完成にこぎ着けた。
「台本がないとか、現場でシーンを作っていったりとか、エチュード(即興)的に演出して役者さんにしゃべらせたりとか、テストもなく一発本番の長回しとか。実験的、ドキュメント的な方法で撮影しました」
自身が出演してきた「台本があってセリフにのっとってっていう」ドラマや映画とは全く異なる方法だが、春田は俳優として今まで「セリフがあると、セリフにとらわれて生きる演技にならない。どうしても決められた演技になっちゃう」葛藤があったという。
そのため、「リアルなものを作るにはどうしたらいいか。舞台のエチュードを映画に採り入れたたらどうなるんだろうと思った。その場その場で生まれるものを撮っていく、本能的な映画を撮りたかった」と説明した。
映画はまだ試写を2回行ったばかり。「海外の映画祭に持っていってから国内で上映」を目指している。
今年、演技と殺陣を教える「熱血春田塾」を神戸で開校。演出家としては兼主演の「チョコレートケイキ」(8月17~19日、シアター・エートー)でセリフを排除したアクションだけの演劇に挑む。デビュー40周年の63歳は、まだまだ領域を広げている。(デイリースポーツ・藤澤浩之)