「皆さんが思うほど、トップの選手だとか世界選手権に出るから、ということは意識してないかもしれへんね。1回転ジャンプを跳ぶ子よりは、3回転や4回転を跳ぶ子の方がどうしても調整の手間はかかってしまうけど、特別なことをしてるつもりはないよ。どんな子でもしっかりと滑れるように調整してあげようっていうのは変わらないし、当たり前のことをしてるだけやから。カッコつけてるように思われるかもしれないけど」
最近はテレビで試合を見ることもあまりない。昔は靴のトラブルが起きないか心配しながら見ていたが、「結果だけネットニュースで見る程度かな。予想した順位より良かったら『良かったなぁ』と思うし、悪いと『何をやらかしたんやろ』って思うけど、試合後にお店に選手が来ても特に何も言わないです。報告もされないし。優勝したら『おめでとう』くらいは言うけど」。将来の試合のことも選手とはほとんど話さない。田山さん流のエールの送り方も、「さっとんに『世界選手権、緊張するなよー』って声をかけたら『します、絶対します』って言って帰っていったわ」と笑う。
どんなスケーターも温かく見守り、応援する気持ちは持ちながらも干渉しすぎない。この絶妙な距離感が選手たちには心地よいのかもしれない。スケート靴だけでなく、気持ちに寄り添いメンテナンスをする田山さん。20日に開幕する世界選手権では、選手たちの足元に目を向けても面白いのではないだろうか。