教育家の水谷修氏が、少年法の適用年齢を18歳に引き下げようとする改正案に異議を唱えた。高校教員や深夜の繁華街パトロールなどを通して若者たちの非行防止と更生に取り組んできた水谷氏が問題提起する。
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昨年6月、民法の一部が改正され、移行措置の上、2022年4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることが、国会で決定しました。また、年齢要件を定める他の法令についても必要に応じて、18歳に下げる改正が進んでいます。そのような中、政府および法務省の中で、少年法の適用年齢を、20歳から18歳に下げようとする動きが進んでいます。皆さんは、これをどう考えますか。私は、反対です。
現行の18歳、19歳を未成年(少年)と見なす少年法の中では、殺人などの凶悪犯罪の場合は、家庭裁判所から地方裁判所に送致され、成人と同様の処罰を受けるケースはありますが、ほとんどの場合は、まずは、鑑別所に送られ、3~4週間、家庭裁判所の調査官による家庭環境や生育環境などの調査を下に、学校や児童相談所とも相談の上で、児童自立支援施設や少年院などへの送致、試験観察や保護観察処分などを通し、その少年の更生を図っています。
しかし、18~19歳が成年とされれば、そのような矯正教育を受ける機会を失い、そのまま警察から検察に送致されることとなり、窃盗などの微罪の場合は、その7割弱が起訴猶予、さらに刑事事件として立件された場合でも、その多くは執行猶予という形で、社会に戻ることになります。
少年犯罪の原因の背景には、未成熟な少年の場合、多く家庭環境や生育環境があり、それを変えていかない限り、その少年の更生の手助けにはならない、という今までの矯正主義の観点から見れば、多くの少年がその機会を奪われることとなり、極論ですが、もとの劣悪な環境に戻され再犯を繰り返すことになりかねません。もっと厳しくいえば、我が国で、犯罪が増加する原因とも成ります。