厳島神社のある広島・宮島のシカ。愛らしいしぐさ姿が観光客にも人気ですが、そんなシカがいつも入店したがる飲食店が参道近くにあると話題になっています。「店主とシカが自動ドアを挟んで対峙していた」という目撃情報も。創業80年を超えるという件のお店「フクヤ食堂」2代目店主、福田耕司さん(72)にお話を聞きました。
-シカとの“攻防”はいつから?
毎日ですよ。ここらのシカは「野良ジカ」で、実は嫌われ者なんです。行政は餌やり禁止の方針なので、いつも腹を空かせてて。観光客のゴミなどを食べてしまうこともあるから、店で出た野菜のクズとか、パンの耳をあげていたら、覚えてしもうて。毎日10頭ぐらいが店の前で待っとるんです。春になったら子供を連れてくるシカもおりますよ。
-だから手で開ける自動ドアにしたんですか?
そうそう。昔の自動ドアだとずっと開いていたので大変だから、4~5年前に手でボタンを押して開くタイプに変えたんです。でも鼻で突っついて開けるツワモノもおるけどね(笑)前はお手をするシカもおったよ。
-実際に「入店」するシカも?
いや、頭は突っ込むけど、入らないね。店の中は少し暗いし、閉じ込められる気分になるんかな?だから、ずっと店の前で待っとりますよ。かわいいもんです。
◇あくまで野生生物
宮島のある同県廿日市市の観光課によると、島内のニホンジカは約500頭。うち約200頭が市街地周辺に生息し、家庭ごみをあさるなど環境面や衛生面での苦情が相次いでいたほか、島内の生態系への悪影響やタバコの吸い殻やポリ袋を誤食する例もあったそうです。そこで市は2008年にガイドラインを策定し、餌やり禁止を徹底。市街地に現れるシカの数は減少傾向といいます。担当者は「宮島のシカは、天然記念物に指定されている奈良とは違い、あくまで野生動物という扱い。ゴミをあさるなど環境面での問題もあり、訪れる方にも餌をやらないようお願いしています」と説明。ただ、毎年観光客を中心に「かわいそうでは」との意見が寄せられるといい、「今後も、より良いシカとの共存のあり方について考えていきたい」としています。