劣化が進んだ推計1億円分の1万円札入り段ボール箱が愛媛県庁に匿名で寄付されたことについて、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は15日、デイリースポーツの取材に対し、「土の中に埋められていたお金という可能性がある」と推測した。
愛媛県によると、1月29日、県知事宛てに段ボール箱が届き、中には大量の1万円札が入っていた。1万円札は変色し、くっついた状態で複数の束になり、紙幣が溶けて固まるなど簡単に剥がせない状態。水分を吸って膨れ上がり、カビが生えている札束もあった。差出人の記載はあったが、中に入っていた手書きの手紙には「架空」と記され、その現金については「何かの役に立ててほしい。そっとしておいてほしい」という趣旨の内容が書かれていたという。
愛媛県は14日に現物を公開。警察に相談して「事件性なし」と判断されたことから、匿名の寄付として受け取ることを決め、今後は日本銀行に紙幣の確認と交換を依頼する。愛媛県の中村時広知事は「心からお礼を申し上げたい。ずっとコツコツ長年にわたって蓄えられたものなんだなと感じた」と会見で語り、昨年7月の西日本豪雨の復旧事業などに活用する意向を示した。
それでも「謎」は深まるばかりだ。なぜ、札束がボロボロなのか。なぜ、約1億円もの現金が匿名で送られてきたのだろうか。
小川氏は「段ボールに土が付いていたり、お札がこれだけ水分を含んでいるということは、誰が見ても土の中に埋めていたということが分かる。銀行からおろしてきたものとはわけが違う。知事さんは『コツコツ貯めたお金』と言っていたが、“コツコツ”というよりも、どこかから掘り出して来たと見る方が普通だ思う」と指摘した。
「土中に埋まっていた現金」となると、その裏で犯罪性の有無が気になるが、小川氏は「警察が2週間かけて調べた結果、『事件性はない』という判断に至ったのだから、問題はないのだろう」とした。その一方で、同氏は「2週間で事件性なしという判断ができたということは、推測だが、警察は送り主本人と接触ができた可能性もあるのではないか。宅配業者に荷物を送る手続きをする際にも防犯カメラ等がある可能性、残された伝票の指紋、その人物を確認することもできる。そのうえで公表したことも考えられる」と捜査の背景を分析した。