勤務先の病院で死亡した高齢患者の養子になりすまし、その患者の口座から2000万円近い預金を引き出そうとした東京都国分寺市の医師・菊池(犯行時は旧姓村上)美佐子容疑者(44)が詐欺未遂と有印私文書偽造・同行使容疑で11月29日、警視庁に逮捕された。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は1日、当サイトの取材に対し、「やっていることが稚拙」と同容疑者の行動について見解を示した。
調べによると、菊池容疑者は同市内の病院に内科医として勤務していた今年7月、同病院で6月末に死亡した90代の女性患者の預金がある銀行に行き、「養女として代わりに現金を引き出しにきた」などと窓口で説明。虚偽の書類(預金払戻請求書)を提出して預金1930万円を引き出そうとしたが、銀行に拒否されたため、亡くなった患者の妹である80代女性を同伴させて、その妹が亡くなっている患者本人だと偽って現金を引き出そうとした疑い。不審に思った銀行側が警察に通報して犯行が発覚した。
菊池容疑者は、犯行時は「村上」姓だったが、事件後に、患者の妹の養子となる手続きによって「菊池」姓に変更していた。同容疑者は容疑を否認し、「(亡くなった患者の)妹に頼まれた。死んだ人の預金を払い戻すことが悪いこととは思わなかった」などと供述しているという。
小川氏は「いったんは銀行に行ってお金をおろそうとして、銀行に断られて失敗。そこでやめておけばよかったものを、その1時間半後に、あまり内容を知らない、しかも認知症である妹さんを連れて行って、(亡くなっている姉)本人になりすまさせてお金を引き出そうとするという、医師にしては、犯行が非常に浅はかというか手口自体が余りにも稚拙過ぎると思いました。それと同時に、銀行員の方は振り込め詐欺対策等で教育されているからだとは思いますが、高齢者を連れてお金をおろそうとしている菊地容疑者の行動をおかしいと感じて警察に通報し、事件が発覚したというところは銀行員の方のファインプレーだと言えると思います」と指摘した。
小川氏は「なぜ、亡くなった被害者の預金残高を知っていたのか、預金通帳等の入手経路など、まだまだ解明されてない点もある。未遂に終わった後、お亡くなりになった90歳代の女性の相続人である(80代の)認知症の妹との養子縁組をしたことをみれば、まだ1930万円に執着していたことが分かる。(今後は)養子縁組の経緯についても捜査が進められ、養子縁組自体が無効となる可能性も強い」と解説した。