地方都市の郊外にある団地で暮らす78歳の高山みつえさん(仮名)。5年前に夫を亡くし、一人で生活しています。腰部脊柱管狭窄症の影響で足にしびれがあり、長い距離を歩くのは大変です。要支援1の認定を受けています。
5年前に運転免許を返納しましたが、自宅から徒歩7分の距離にスーパーがあるので、週2回、ゆっくり歩いて買い物に行っていました。ところが、その店が3月末で閉店することが分かりました。次に近いスーパーまでは、徒歩で25分かかります。バスで行こうとしても、最寄りの停留所には1時間に1本しかバスが来ません。タクシーだと往復で約1800円かかり、週2回で月額約1万4000円、年額では約17万円になります。
「これから、どうやって食べていけばいいのか」。みつえさんは、遠方に住む娘(50歳)に電話口でそう漏らしました。
車を運転しない高齢者にとって、近くのスーパーなどの閉店は、日々の食生活にも影響しかねない大きな問題です。解決の糸口はあるのでしょうか。まずは、相談できる窓口から見ていきます。
買い物に困る高齢者は全国で900万人超えも
農林水産政策研究所は、店舗まで直線距離で500メートル以上あり、かつ自動車を利用できない65歳以上の人を食料品アクセス困難人口と呼んでいます。2020年の推計では全国で904万人。65歳以上のおよそ4人に1人にあたります。
農林水産省の全国市町村アンケートでも、回答した市町村のおよそ9割が、買物困難者への対策が必要だと答えています。買い物に行けなくなることは、もはや、みつえさん個人だけの問題ではないといえそうです。
地域包括支援センターと市区町村の窓口で確認できることとは?
みつえさんのような、日常生活に対する悩みは地域包括支援センターで相談できます。
◇まずは地域包括支援センターに相談する
みつえさんが最初に訪ねたのは、市の地域包括支援センターでした。市町村が設置する高齢者の総合相談窓口で、保健師や社会福祉士、主任介護支援専門員などが配置され、全国に約5500カ所あります。介護保険の手続きだけでなく、買い物や食事の困りごとも相談できます。
要支援の認定を受けた人や、厚生労働省が作成した高齢者の心身の状態などを確認する「25項目の基本チェックリスト」で、介護予防サービスなどの対象になると判断された人であれば、介護予防・日常生活支援総合事業の訪問型サービスで、掃除や洗濯、買い物といった生活援助を受けられる場合があります。
◇移動販売や配食、乗合交通を市区町村の窓口で確認する
窓口では、介護保険外サービスとして、地域で実際に利用されている支援も教えてもらえます。地域によっては、生鮮食品などを販売する移動販売車、安否確認を兼ねて昼食や夕食を届ける配食サービス、65歳以上を対象に週2回まで1回あたり200円で買い物を代行する事業など、さまざまな支援があります。
外出を支える仕組みもあります。事前の利用者登録をして予約する乗合タクシーを1乗車300円で使える例もあります。どのようなサービスが使えるかは自治体ごとに大きく異なるため、市区町村の高齢者福祉担当課で確認しましょう。
買い物の変化を暮らし全体を見直す機会に
みつえさんの買い物は、2つの支援で回るようになりました。ひとつは、団地の集会所前に週1回来る移動販売車です。生鮮食品を自分の目で選べます。もうひとつは、市の社会福祉協議会が行う買い物代行で、米や飲み物のような重い品は、こちらに頼みます。遠方に住む娘が月2回帰省して手伝う分と合わせ、週2回の買い物が成り立つようになりました。
「品物を目で見て選べるのが、やっぱりうれしい」。みつえさんは、そう話しています。
買い物に行く回数が減ると、人と会う機会が減ったり、食事の内容が単調になったり、日常生活の質も落ちかねません。まずは地域包括支援センターや市区町村の高齢者福祉担当課、社会福祉協議会、担当のケアマネジャーに相談してみてください。
【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。