首都圏で一人暮らしの契約社員・桜井さん(仮名、52歳)。年収は380万円ほどで、家賃7万円の賃貸マンションに住んでいます。最寄り駅まで徒歩15分、近くにはスーパーも少なく、年齢を重ねた後の生活を少し気がかりに思っています。未婚で子どもはおらず、頼れる親族も多くありません。
そんななか、同世代の友人から「引っ越しをしようとしたら、年齢を理由に入居を断られてしまった」という話を聞きました。その言葉をきっかけに桜井さんは、老後の住まいに対して不安を感じるようになりました。現在は健康上の大きな不安もなく働いていますが、家賃には負担を感じています。今後、年金での暮らしになったとき、自分の生活はどうなるのだろう…と考えるようになったのです。
高齢になると、収入や保証人の有無、緊急連絡先などの条件により、賃貸住宅への入居が難しくなる場合があります。老後の備えは、お金だけでなく「住み続けられる場所」の確保も欠かせません。そこで、50代のうちに備えたい「老後の住まい」について解説いたします。
50代で老後の住まいを考えるべき2つの理由
老後に備えるには、元気な50代から準備を始めることが大切です。
高齢になると、収入の減少や体力の低下によって、住み替えや住宅購入が難しくなります。また、十分な資金があっても、高齢を理由に賃貸契約を断られる場合があります。
50代は「老後はまだ先」と考えがちです。しかし、早めの準備が老後の安心につながります。
▽50代なら、住み替えや住宅購入を検討できる場合が多いから
50代は、老後の住まいを見直しやすい年代です。仕事を続けている人が多く、収入や健康面でも選択肢が残されています。
例えば、住宅ローンは、60代以降になると審査が厳しくなります。また、50代は引っ越しによる体力的な負担に対応しやすく、新しい環境にもなじめる年代です。
▽お金だけでは住まい問題は解決しないから
老後の住まい問題は、貯蓄だけで解決できるとは限りません。
孤独死や家賃滞納のリスク、緊急連絡先の不在などの理由から、資金があっても独身の高齢者は賃貸の入居を断られるケースが少なくありません。そのため、「住める家を探す」だけでなく、「どこで暮らすか」を早めに考えることが大切です。
また、賃貸では家賃に加えて、更新料や保証料がかかります。こうした固定費は、年金生活になっても支払いが続きます。
50代から始めたい老後の住まい対策
「まだ元気だから大丈夫」と思っていても、住まいの問題は年齢を重ねるにつれて現実味を増します。実際に、50代のうちから動き始めたことで、将来への不安を軽減できた人もいます。
桜井さんも、元気な50代のうちに、住まいの準備を始めることにしたそうです。
▽公営住宅やセーフティネット住宅を調べておく
桜井さんが最初に取り組んだのは、公営住宅やセーフティネット住宅の情報収集です。セーフティネット住宅とは、高齢者や障害者、子育て世帯などであることを理由に入居を拒むことのない、国に登録された民間の賃貸住宅です。
自治体の窓口で相談したところ、高齢者や低所得者向けの入居支援制度があると知りました。一方で、公営住宅は募集時期が限られており、抽選になる地域が多いと説明を受けました。また、自治体ごとに応募条件が異なるため、急いで探しても間に合わないとのことでした。
そこで桜井さんは、申し込みできそうな住宅を一覧にまとめ、募集時期を記録しました。併せて、民間のセーフティネット住宅も調べ、「保証人がいなくても相談可能」と記載された物件も確認したそうです。
このように、50代のうちから情報を集めておくと、将来の住まい探しに役立ちます。相談窓口としては、お住まいの自治体の『居住支援協議会』や、福祉の専門家である『居住支援法人』があります。
▽保証会社や緊急連絡先を確認しておく
近年、保証人不要で保証会社を利用する物件も増えています。しかし、高齢者や低年金者の場合、保証会社の審査で断られるケースもありますので、注意が必要です。桜井さんは、自分でも利用できそうな保証会社を調べ、必要書類や費用を確認しました。
また、不動産会社から「緊急連絡先は誰ですか」と聞かれる場合が多いと知り、姉や長年の友人にも相談したそうです。さらに、入院時の連絡先や体調不良時に頼れる人も探しました。
▽持ち家と賃貸の費用を比較する
最後に桜井さんは、「このまま賃貸に住み続けるか、それとも小さな中古マンションを購入するか」を比較しました。
賃貸には、住み替えしやすく、修繕対応を大家に任せられるメリットがあります。一方で、老後も家賃負担が続く点には不安を感じていました。
持ち家は、住宅ローン完済後の住居費を抑えやすい半面、修繕費や固定資産税がかかります。また、築年数が古い物件を購入する場合、将来的な修繕負担も考える必要があります。
そこで桜井さんは、老後に必要な住居費を大まかに計算し、将来の年金見込み額と照らし合わせました。その結果、「駅近よりも、医療機関やスーパーが近い物件を優先したい」と考えるようになったそうです。
住まい選びに、絶対的な正解はありません。ただし、「どのような老後を送りたいか」を50代のうちから考えておくと、選択肢を増やせます。
◇ ◇
現在、桜井さんは老後に備え、公営住宅やセーフティネット住宅の情報収集を進めています。併せて、居住支援法人の情報も確認しています。その結果、支援制度や相談先が分かり、老後の住まい探しに向けた選択肢を整理することができました。 50代から準備を始めたことで、桜井さんは老後の住まいに対する不安が和らいだと感じています。
老後の住まい問題は、年齢を重ねてから表面化しやすい課題です。将来の住まいを確保するには、元気に動ける50代から準備を始めることが大切です。
将来困らないためにも、「老後はまだ先」と考えず、今から少しずつ準備を始めてみてはいかがでしょうか。
【出典】
りそなグループ「60歳で住宅ローンは組める?リスクと審査通過のためのポイント」
https://www.resonabank.co.jp/kojin/column/jutaku/column_0026.html
三井住友銀行「住宅ローンは何歳まで組めるの?年代別のポイントも解説」
https://www.smbc.co.jp/kojin/jutaku_loan/column/until-the-age/
一般財団法人 高齢者住宅財団「家賃債務保証制度 よくあるご質問」
https://www.koujuuzai.or.jp/service/rent_guarantees/faq-rg/
国土交通省「単身高齢者などの賃貸住宅への入居の不安を解消!改正「住宅セーフティネット法」がスタート」
https://www.gov-online.go.jp/article/202511/entry-9947.html
とうきょう福祉ナビゲーション「都営住宅の優遇制度」
https://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/20kuwashiku/20k_fukusu_service/jutaku/01_toeijuutakuyusen.html
【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。