「は? お客様! 困ります! あーっ! 巣作って羽化までされたら困りますぅー! 助手席なんてめったに開けないから気づかなかった」
仕事で使用しているトラックの助手席側のステップに、日本国内にのみ生息する「セグロセキレイ」のヒナの巣が――そんな驚きのシチュエーションを捉えた投稿が、SNSで大きな注目を集めました。
セグロセキレイ(背黒鶺鴒)とは、スズメ目セキレイ科に分類される全長約21cmの野鳥です。主に日本国内にのみ生息する「日本固有種(日本特産種)」。1年中見られる留鳥として、河川や湖沼など水辺の近くでよく見かけられる鳥です。そんな身近な野鳥が、まさか毎日仕事で乗る車という思いもよらない場所に命の営みの場を選ぶとは――。
あまりにもドラマチックでユーモラスな出会いを果たしたのは、Xユーザー・限界1or8副代表アツシさん(@ATSUSHI_C6)。このあと、ヒナはどうなったのでしょうか。お話をうかがいました。
思わず二度見!? 助手席側からピヨピヨ…
すべての始まりは連休前、4月27日のことでした。アツシさんがいつものように仕事を始めようとした際、トラックから聞こえてきたのは、およそ車内からは響くはずのない愛らしい鳴き声だったといいます。
「会社の敷地内に停めているトラックの運転席に乗ったところ、助手席側からピヨピヨ聞こえてきました。ドアを開けて確認すると、巣の中で鳴いているヒナを見つけたんです。ただただ驚くばかりでした」
助手席側のステップに、いつの間にか立派な鳥の巣が築かれ、そこには小さな命たちが誕生していたのです。脳裏をめぐった“心の声”とともに、この光景を捉えた写真をXに投稿したところ、瞬く間に多くの反響を呼び、有益な情報が次々と寄せられました。
「コメント欄で、いろいろと教えてもらうことができました。巣ができて卵やヒナがいる場合、巣を移動したり、撤去したりすることは、鳥獣保護管理法(鳥獣保護法)で原則禁止されているとのこと。なるほど、勝手に触ってはいけないのだなと理解しました」
法律による定め、そして目の前で一生懸命に生きているヒナたちの姿を受け、投稿者さんはある決断を下します。
「ヒナが巣立つまで待つことにしました。幸いなことに、このトラックはもともと稼働率がそれほど高くなかったんです。仕事に支障がない状況だったからこそ、静かに見守ってあげようという選択ができました」
エサを運ぶ親鳥、すくすくと成長したヒナたち
トラックのステップという一風変わった“我が家”で暮らすヒナたち。投稿者さんは脅かさないよう、適切な距離を保つように心がけました。
「親鳥がヒナにエサを運んでいるところを目撃したんです。遠くからそっと見守ることにしました」
親子の絆を間近で感じながら、季節は5月の大型連休へ――。投稿者さんはヒナたちのことが頭から離れず、そっと様子を確認しに足を運んでいました。
「連休に入る前、安否確認のために再び様子を見に行くと、発見したときよりもひと回り大きく育っていました」
日々たくましく変化していくヒナたちの姿を見つめるうちに、投稿者さんの心境にも、単なる「発見者」を超えた温かい感情が芽生えていきました。
「だんだんと私も、まるで親鳥になったかのような気持ちに。このまま無事に育ってほしいと、祈るような気持ちでしたね」
X上でも、「優しい世界」「えっ、奇跡すぎます! かわいすぎます!!!」「優しい運転手さんで良かった」「全員無事に巣立ちますように」など、多くのユーザーがヒナたちの成長を見守るようになりました。
ついに迎えた巣立ちのとき…「おめでとう!」
そして、出会いから約10日が経過した5月7日のこと、ついにその瞬間が訪れます。
「トラックの前を通ったところ、ヒナが出てくるのを見かけました。どうやら無事に巣立ってくれたようです」
投稿者さんは、元気に歩き回るヒナの様子を収めた動画、また空っぽになった巣の写真とともに報告。多くの人に見守られたヒナたちは、元気に巣立っていったようです。
「たくさんのいいねやコメント、リツイート本当にありがとうございました! トラックは巣を撤去した後、通常業務で使用します。それでは、みなさん良い一日を」と続け、ヒナとの思い出深い出会いは幕を閉じました。
この喜ばしい報告に、ヒナの様子を見守ってきたユーザーから次々と温かいコメントが寄せられています。
「ありがとうございます!!」
「無事巣立って本当によかったです!」
「ヒナちゃんの卒業式、おめでとうございます」
「ヒナと親鳥とトラックの持ち主さんに幸あれ」
「おめでとうございます! 気になっていました」
「見守ってくれた投稿者さんに、いいことがありますように」
「感動! こうして見守ってくださった投稿者さん、本当にありがとうございました」
「つらいニュースばかりのなか、心温まるエピソードをおすそわけいただき、ありがとうございました」