「4月になったらいきなり担任。3月まで大学生だったのに」――。
大学を卒業したばかりの若手教員が、ほぼ経験ゼロの状態で35人前後の学級を任される現状に疑問を投げかけた投稿が、Xで反響を呼んでいます。
投稿したのは、小学校教員歴13年の現役教師・@hinorie555さん。自身も「元引きこもり専業主婦」から40歳で教員になった経験を持ち、学校現場でのストーリーや子どもの教育に役立つ知識を発信しています。
@hinorie555さんは投稿で、こうした若手教員が「若い先生で大丈夫なんですか」と保護者から不安の声を向けられながら、“無謀なデビュー戦”に立たされていると指摘しました。
「保護者が悪いわけじゃない。不安になるのは当然」としたうえで、問題は「先月まで大学生だった人間に35人の学級と全責任を背負わせる構造そのもの」だと訴えています。
会社であれば、新人がいきなり店長になり、部下35人を持ち、プロジェクトリーダーを任されるようなもの。しかし公教育の現場では、それが“普通”として回っているのではないか。投稿には、そんな問題意識が込められていました。
担任業務は「高度な統合スキル」
担任の仕事は、単に授業をするだけではなく、クラス全体の雰囲気を見ながら子どもたちを支えていく『学級経営』も求められます。
@hinorie555さんは、担任業務について「本物の学級経営とは、毎日の空気の変化や、子どもたちの小さな違和感を察知しながら動く、高度な統合スキル」だと説明します。
授業だけでなく、トラブル対応、保護者対応、発達特性への理解、授業内容の即時修正など、担任の仕事は多岐にわたります。
「机上では習得できない。ましてや初日からできるはずがない」
投稿には、「1年目担任はやめてあげてほしい」「保護者も先生も不安だらけ」といった共感の声が寄せられました。
突然の担任受け持ちに「完全にパニック状態だった」
@hinorie555さん自身が初めて担任を受け持ったのは、40歳で教員になった年でした。1学期は非常勤講師として勤務し、夏休み直前に産休へ入る教師の代わりとして担任を引き継いだといいます。
「最初の週は4日間だけでしたが、本当に大変でした。やることが次々と押し寄せてきて、何から手をつければいいのか分からない。完全にパニック状態でした」
その時に支えてくれたのは子どもたちでした。
「初日から手紙をくれる子がいたり、戸惑っている私を見て協力してくれたりしたんです。教えるというより、子どもたちに支えてもらった4日間でした」
40歳でのスタートだったため、「若い先生で大丈夫ですか」と言われた経験はなかったそうです。それでも、教員としてはまったくの新人でした。
「授業の組み立ても、クラス運営も初めてのことばかりでした。『年齢』と『経験』は別物なんだと、自分が一番痛感しました」
だからこそ、20代前半の新卒の先生が保護者から「大丈夫ですか」と言われる状況に、強い危機感を抱いています。
「1年目に背負わせる荷物として重すぎる」
@hinorie555さんによると、教員1年目で離職するケースは珍しくありません。職場の人間関係、保護者対応、クラス運営の難しさなど、複数の要因が重なって心が折れていくことが多いといいます。
自身も、学級崩壊したクラスの担任代理を6週間担当した際、限界を感じた経験がありました。
「毎日が綱渡りでした。朝、学校へ向かう足が重くなる感覚を初めて経験しました。6週間だから耐えられましたが、もし1年間だったら、自分もどうなっていたか分かりません」
こうした経験から、@hinorie555さんが若手教師を守るために必要だと考えるのは、「1年目は担任を持たせない」仕組みです。先輩教師のクラスに副担任として入り、1年かけてクラス運営を学ぶ必要があるといいます。
学校や配置によっては、1年目から担任を持つ新任教師もいれば、担任を持たずに経験を積む新任教師もいます。現在、新任指導の担当もしている@hinorie555さんは、そうした配置の違いによって、負担の大きさにも差が出ると感じているそうです。
「担任を持っている先生は、本当に大変そうで胸が痛みます。担任を持っていない先生と比べると、心の余裕も成長のペースも明らかに違うんです」
「本人の能力ではなく、1年目に背負わせる荷物として重すぎるんです。『1年目は副担任』を制度として徹底するだけで、救える若手はたくさんいます」
「若い先生を守ることは、子どもを守ること」
この問題を変えるために、@hinorie555さんが声を届けたい相手は文部科学省と教育委員会です。
「新卒をいきなり担任にするかどうかを決めているのは、現場の校長先生ではなく、その上の制度設計です。現場レベルだけでは、もう解決できない問題なんです」
教員不足が深刻化する中、このままでは「先生になりたい」と思う若者そのものが減っていく。@hinorie555さんはそうした危機感を募らせます。
「10年後、20年後、子どもたちの前に立つ先生がいなくなる未来が、もう目の前まで来ていると感じています。若い先生を守ることは、結局、子どもたちを守ることなんです」