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「いつもごめんね」「そこはありがとうでしょ」 看病される姉と看病する妹 愛するがゆえに姉が最後に望んだもの【漫画】

海川 まこと 海川 まこと

お互いを大切に想えば想うほど、その優しさが時として相手の負担になったり、言葉にできない孤独を生んでしまったりすることがあります。看護師の明さんがX(旧Twitter)に投稿した作品『ある姉妹のすれ違い』は、“支える側”と“支えられる側”のすれ違いを描いています。

物語は、入院中の姉のために、妹が手際よく着替えや日用品を棚に整理している場面から始まります。「いつもごめんね」と申し訳なさそうにする姉に対し、妹は「そこは『ありがとう』でしょ」と明るく応じます。

そこへ、看護師が病室を訪れ挨拶を交わしますが、妹は歯ブラシが足りないことに気づくと、慌ただしく部屋を飛び出していきました。その様子に「慌ただしいんだから」と呆れたようにこぼす姉に対し、看護師は「でも本当に頼りになるって看護師の間でも話題ですよ」と優しく微笑みます。

しかし、その言葉を受けた姉の瞳は、どこか憂鬱な色を帯び、「あの子は、生まれた瞬間から私の世話をしているようなものなので…」と言葉をにごします。幼い頃から病気がちだった姉にとって、自分を支え続けてくれる妹の存在は深い感謝であると同時に、相手の人生を縛り続けているという「負い目」でもあったのです。

この言葉を聞いた看護師は「それならば、早く良くならなきゃですね」と明るく励まします。しかし姉が次に発した言葉は、「次に急変したとき、治療を拒否することは可能でしょうか」という看護師の言葉とは正反対のものでした。それは、自分がいなくなることでしか妹を「姉の世話」という役割から自由にしてあげられないことに向き合った、妹への愛情だったのです。

同作について、作者の明さんに詳しく話を聞きました。

「長生きしてね」と「終わりにしたい」の間で。家族でも違う命の価値観

ー姉妹という近しい関係性の中で“支える側”と“支えられる側”のすれ違いを描こうと思った理由を教えてください。

今回の作品は、「ぐっとくる二人のやり取り」というテーマで作品を作るというコルクマンガ専科の課題でした。その中で「自分のぐっとくるやり取りは何か?」を考えたときに、私は自分にとって「互いの価値観の違いによるすれ違い」というのが、心を掴まれる1つの要素だなと感じました。

じゃあ、「どんな価値観の違いを描こうか?」という時、私は10年間看護師として病院に勤務していましたから、医療の現場で感じたことが実体験として浮かび上がってきました。

ー医療現場では、患者本人と家族の気持ちがすれ違うケースは珍しくないのでしょうか?  

珍しくないと思います。むしろ、患者さんも家族も1人ひとり違う人間なので、考えや気持ちは違って当然だと私は感じています。実際、家族が「長生きしてほしい。だから手術頑張って」と望んでいても、患者さんは「もう年だから、本当は手術なんてしたくないんだ」と看護師に本音を話すことがあります。

逆に、患者さんは「最高の治療を受けて長生きしたい」と願っていても、家族が「もう介護に疲れた。終わりにしたい。」と願っていることもありました。同じ家族同士の中でも、意見が割れるということもよくあります。なので、手術の決定や延命治療の中止など、大事なことについては、事前に家族でよく話をするようにお願いしていました。

急に状態が変わって手術や治療が必要となったときに、意見のすり合わせをする時間がなくて、後で「本当は希望していなかった」となると、患者さんも、ご家族も、医療従事者もみんな辛いですからね。

ー家族だからこそ言えない本音について、現場で印象に残っていることはありますか?

やはり「本当はもう治療をしたくない。でも家族が望んでいるから仕方なくするんだ」と本音を漏らされた時のことは印象に残っています。

高齢の女性でしたが、ご家族も皆さんいい方達ばかりで、毎日のように息子さん、お嫁さん、お孫さんが入れ替わり立ち替わりお見舞いに来ているんです。側からみると、すごく愛されていて素敵な家族だなと思いました。

みんな「おばあちゃん、長生きしてね」「次の発表会も見に来てね」「私の結婚式にも出てね」と女性が回復して退院してくるのを心待ちにしているんです。でも、女性本人は、もう気力がないんです。「もう頑張りたくない。お願いだから治療も何もしないで安らかに終わらせてくれ」というのが本音でした。

医療者としては、本人が望んでいない治療はできません。本当はどうすべきなのか、その後本人、家族、医師などを交えて話し合いました。結局、本人の意思を尊重して積極的な治療はしないという方針に決まったんですが、初めて本音を聞かされた時にご家族がショックを受けていたのが、今でも印象に残っています。

<明さん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/rikukamehameha
▽電子書籍版(Amazon)
軽業師タチアナ
https://yosumi.jp/comics/01KPDE4VQ1NVEF1CWSE0858X43
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