映画『正直不動産』で登坂不動産の営業部長・大河真澄を続投するお笑いコンビ・シソンヌの長谷川忍。話題作での怪演も注目を集める中、俳優業への向き合い方や本業であるコントとの相乗効果について聞いた。
コントと演技は「同じ高速道路で車線が違うだけ」
芸人として培ってきた笑いのメソッドと、カメラの前で求められる役者の顔。一見相反するようにも思える二つの表現手法について、長谷川は静かに口を開いた。
「あんまり自分は違うという意識はないですね。コントも演技なので、意外と脚本の意図を汲んでやっているつもりです。『正直不動産』においては、ちょっとおっちょこちょいで昔からいるような、偉そうにしているけれど舐められている……みたいな部分を意識して。でも一応、部長としての威厳を保てるような演技ですかね。脚本からはみ出さないというのは意識しています」
他者と作り上げるフィクションの世界へ足を踏み入れるとき、胸の内に固く決めているひとつのルールがあるという。
「相方とのコントのときはいくらでもいいのですが、映画やドラマはチームでやっているので、あまり本筋からは外れないように意識しています。芸人的には『脚本から下りない』というか。ちゃんとその世界のなかで成立するように意識しています」
異ジャンルへの挑戦にも気負うことなく、あくまで自然体で現場を楽しむ。そこには、舞台の上で数多のキャラクターを生み出してきた芸人ならではの、軽やかな矜持が漂っていた。
「僕たちは、コンビ共々ドラマや映画に出ることがすごく好きなんです。コントと演技って一緒なので、ボケとツッコミがなくても笑いは取れますし、その意味ではドラマも一緒です。出ることに抵抗はないので、お声がかかったらうれしくて出させてもらうようにしています。漫才をやっていたら違うかもしれませんが、コントをやっているので、そこまでくっきりと分けていないです。もちろん境界線はありますが、別物とは考えていないです。一応同じ延長線上にある仕事かなという意識ですね。一つの道路で車線が違う感じ。同じ高速道路を走っています」
決められた枠のなかで演じることがお笑いに生きる
異なる土俵での奮闘は、決して一時的な寄り道ではない。ドラマという厳格な枠組みの中で揉まれる経験は、シソンヌというコンビの核を揺るぎないものへと昇華させている。
「うちの相方(じろう)が書くネタって、基本的に分かりやすいボケとツッコミがあるわけではないので。外で演技をやって、良くも悪くも枷があるドラマのなかで役に入り込むと、『本当はこれ言ったらウケるけれど、この人は言わないしな』ってことがあるおかげで、コントに行ったとき、『これは言える、これは言えない』ってことが瞬時に判断できるようになっています。相方も外で芝居をやってきて感じていると思いますね」
舞台上でのやり取りに深みをもたらしているのは、カメラの前で徹底的に磨かれた「登場人物のリアリティ」に他ならない。さらに長谷川は、シソンヌのコントの根底に流れる哲学と、異業種の現場に身を置くことの真の意義を紐解いていく。
「昔から2人で笑いをとるポイントは大事にしていますが、大切なのはそこに行くまでの過程なんですよね。フリっていうやつ。その芝居が上手ければうまいほど、ウケるのは分かっている。外でもまれているからこそ、よりいいものになっているのかなと思っています」
映画『正直不動産』は5月15日より全国ロードショー