tl_bnr_land

「電動キックボードは歩道を走っていいのか」背後からぶつかられて転倒…知られていない走行ルールと事故時の責任【弁護士が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

会社帰りの夕方、駅前の歩道を歩いていたDさん(50代)は、背後から来た電動キックボードと接触し転倒しました。膝はすりむき、バッグの中のスマホも割れていました。

振り返ると、キックボードの運転者はそこで呆然と立ち尽くしていました。Dさんは驚きと不安、そして怒りが入り混じるなか「電動キックボードって歩道を走っていいのか」「もし重傷を負ったら、治療費は誰が払うのか」と運転者に詰め寄ります。

身近な存在になりつつある電動キックボードですが、走行ルールや事故の責任は十分に知られていません。走行中のキックボードと歩行者と接触した場合、法的にはどう判断されるのでしょうか。弁護士法人・響の古藤由佳弁護士に話を聞きました。

電動キックボードの走行ルールを確認

ーキックボードを運転中に歩行者にぶつかった場合、どのような基準で「どちらが悪い」と判断されますか?

歩行者対車両の事故は、歩行者側には過失がないと判断されたり、その過失割合が極めて低くなったりする場合がほとんどです。そのため車両側に大きな過失があると判断されます。

ただ大まかな過失割合は、場面によって異なります。例えば衝突した場所が、歩道上なのか車道上なのか横断歩道上なのかでも異なりますし、標識や信号の無視があったのかなどの事故状況の類型でも同様です。

住宅街や商店街などでの事故では、人の往来が激しい分、車両側に前方確認や安全配慮が強く要請されるので、歩行者側の過失割合が低く修正されます。また、歩行者が高齢者や子どもだった場合も、歩行者側の過失割合が低く修正されます。

ー歩行者にも「スマホを見ていた」「急に飛び出した」などの原因があった場合、責任はどうなるのでしょうか?

直進している電動キックボードの横から、急に歩行者が飛び出したり、横断禁止の場所を横断していたり、歩行者側の赤信号を無視していたり等の事情がある場合は、歩行者側の過失割合が高めに修正されます。

歩行者がスマホを見ていたこと自体は、歩行者側の過失割合を高めることにはなりません。しかしスマホを見ながら歩いていた結果として、前方不注意があり信号無視してしまった場合や、近くにいる車両に気づかなかったという事情がある場合には、歩行者側の責任が重くなるということです。

ーではキックボードを運転していた側についてで、飲酒したりスマホを見ながら運転したりした場合も、自動車と同じように罰則を受けますか?

電動キックボードは道路交通法上「車両」に該当するので、普通自動車と同様にスマホを使った運転や飲酒運転をすると罰則を受けます。

例えば、酒酔い運転の場合は5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(65条1項、117条の2第1項1号)。酒気帯び運転の場合は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(65条1項、117条の2の2第1項3号)。スマホのながら運転の場合は1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金(法117条の4第1項2号)です。

また、キックボードは2つの種類があり、一般小型原動機付の場合、免許停止や免許の取り消し処分などもあり得ます。免許がなくても運転可能な特定小型原動機付の場合には、公安委員会から、運転者講習の受講命令が出る場合があります。

なお、一般小型原動機付は、車体が長さ190cm以下、幅130㎝以下で、電動出力1.0kw以下、法定速度30km/hのものを示します。そして特定小型原動機付は、車体が長さ190cm以下、幅60㎝以下であり、電動出力0.6kw以下、時速20kmを超える速度を出すことができず、最高速度表示灯が備えられており、道路運送車両法上の保安基準に適合しているもののことを示します。

そしてどちらも、車道の走行のみが認められていることも特徴です。

ただし、特定小型原動機付の方で、最高速度表示灯を点滅させ、時速6kmを超える速度を出すことができない「特例」モードに切り替えた場合に限り、歩道の走行が認められます。

事故を起こしたときの扱いは、まだまだ案件の蓄積が少ないですが、一般小型原動機付は原付としてバイクと同様の扱い、特定小型原動機付はどちらかというと自転車に準じた扱いをされています。

どちらも「車両」であることに違いはなく、歩行者相手の事故では原則として高い過失割合が認められることに注意が必要です。

◆古藤由佳 弁護士(弁護士法人・響)
「難しい法律の世界をやさしく、わかりやすく」をモットーに、消費者トラブルや交通事故・借金・労働問題・相続・離婚など、民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける。FM NACK5『島田秀平と古藤由佳のこんな法律知っ手相』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などテレビ・新聞・雑誌等メディア出演も多数。
▽弁護士法人・響 公式ホームページ
https://hibiki-law.or.jp/
▽『こんな法律知っ手相』ホームページ
https://hibiki-law.or.jp/radio/
▽弁護士法人・響 公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@hibiki-law.official

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

気になるキーワード

新着ニュース