カセットコンロは、家庭でも飲食店でも、アウトドアでも使われていて、災害時でも心強い存在。電気や都市ガスが止まっても手軽に使えることから、非常用として備えている家庭も多いでしょう。ただ、その燃料となるカセットボンベについて、どこまで意識して選んでいるかと聞かれると、少し考えてしまいます。正直なところ、カセットコンロのカロリーは意識していたものの、カセットボンベ自体にはどれも大差ないだろうと思っていました。
一般的なカセットボンベに使われているのは液化ブタンです。これは使い捨てライターとほぼ同じ成分で、身近で扱いやすい燃料。一方で、この成分には弱点があり、それが寒さなのです。
一般的なカセットボンベに使われている液体ブタンは10℃以上での使用が推奨されています。そのため、冬の屋外や寒冷地では、火がつかなかったり、ついても火力が極端に弱くなったりすることがあるそうです。普段、室内で鍋をするには問題にならなくても、災害が冬に起きた場合では状況が一変します。暖房が止まり、寒い室内や屋外で使うことも考えられるからです。「非常時に使えるはずの道具が、気温のせいで思うように使えない」としたら、不安は残るでしょう。
「産業防災展2026」で注目されたマイナス5℃対応「CB TOUGH」とは
東京ビッグサイトで開催された「産業防災展2026」で、足を止めたのが新富士バーナー(SOTO)のブースでした。そこには用途の異なる3種類のカセットボンベを展示していて、担当者は次のように説明してくれました。
「液化ブタンのみを使ったレギュラーガス、使用目安5℃のパワーガス、そしてマイナス5℃まで対応できる『CB TOUGH』です」。中でも目を引いたのが「CB TOUGH」でした。一般的なカセットボンベが10℃以上を想定しているのに対し、マイナス5℃までの環境でも使用可能と言うのです。数字で見ると15℃の差ですが、冬場では体感以上に大きな違いになるでしょう。
なぜそこまで低温に対応できるのか? 理由はガスの成分にありました。「CB TOUGH」は、液化プロパン、液化イソブタン、液化ノルマルブタンを混合しています。この配合は、登山や冬キャンプで使われる、ずんぐりむっくりしたドーム型をしたOD缶(アウトドア缶)と同じだそうです。低温でも気化しやすく、寒さの中でも比較的安定した燃焼ができるのが特徴とのこと。またカロリーそのものも高く、例えば、1リッターの水を沸騰するのに、SOTOのバーナーヘッドを使った場合では、レギュラーガスよりも「CB TOUGH」のほうが1分ほど早く沸騰します。家庭用の円筒形の細長いカセットボンベであるCB缶に、冬山向けのガスを詰めたのがOD缶の「CB TOUGH」、そう考えると、イメージしやすいかもしれません。
OD缶と同じガスをCB缶に詰める挑戦! 製品化の壁は「高圧に耐える容器」だった
ただし、OD缶と同じガスをCB缶に充填すればそれで終わり、という単純な話ではありませんでした。OD缶に充填されているガスは圧力が高く、CB缶のカセットボンベでは耐えられません。そのため、ボンベの構造自体を見直し、頭部のカーブの形状を変え、接合部にも厚みを持たせて高圧に対応。一見するとレギュラーガスを充填したCB缶と大きく変わりませんが、缶自体も中身も別物なのです。
取材で印象に残ったのが、「ドロップダウン現象」の話でした。ガスが気化する際に周囲の熱を奪い、カセットボンベ自体が冷えてしまう現象で、長時間使うと火力が落ちることがあるとのこと。鍋料理などで連続使用すると、室温が10℃以上あっても起きる可能性があるそうです。
「使用可能温度ギリギリで使うより、余裕のあるカセットボンベを選んだほうが安心です」。担当者のこの言葉は、災害時を想定すると納得感がありました。なお、カセットボンベが冷えたからといって、カイロやお湯で温める行為は非常に危険とのこと。これは覚えておきたい点です。
夏場の高温時にも注意が必要! 40℃以上で「火柱が立つ」恐怖
ボンベは寒さだけでなく、高温にも注意が必要です。ガスによっても違いますが、40℃前後が安全使用の上限で、それを超えると内部圧力が上がり、激しい炎が出ることもあるそうです。また、夏場の車内放置や直射日光の当たる場所での保管は避けるべきでしょう。
カセットコンロは、備えているだけで安心しがちです。しかし、使う環境まで考えると、「本当に使える状態か」は一度見直す価値があります。マイナス5℃まで対応する「CB TOUGH」は、価格はやや高めですが、非常時に使えないリスクを減らせると考えれば、選択肢として覚えておいてもよさそうです。災害は季節に関係なくやってきます。備えるなら、状況に合った「使えるカセットコンロ」を意識したいところです。
▽新富士バーナー株式会社(SOTO)
https://soto.shinfuji.co.jp/