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妊娠14週で突然の発疹「障がいが残るけど産むの?」と迫られた母 先天性風疹症候群の娘と生きた27年、今も訴える「同じ思いをする人を作らない」

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先天性風疹症候群(CRS)とは、妊娠中の母親が風疹ウイルスに感染し、胎盤を通じて胎児に感染することで赤ちゃんに難聴や心疾患、白内障などの障がいが起きる疾患です。

27年前、妊娠14週で風疹を発症し、医師から厳しい選択を迫られた一人の女性がいます。「風疹をなくそうの会 『hand in hand』」の運営メンバーである、大畑茂子さん(@stopFuushin)です。風疹を妊娠中に患い、先天性風疹症候群の娘を出産した経験から「風疹をなくしたい」という発信を続ける大畑さんの活動が、XなどSNSで注目を集めています。

妊娠14週、突然の発疹

27年前、大畑さんが三女を妊娠して14週目ごろのことでした。昼食を食べていたとき、自分の体に発疹が出始めていることに気がついたといいます。

「実はその少し前、長女が幼稚園で風疹をもらってきていたんです。『妊娠さんが風疹を罹ったら大変なことになる』という話は耳にしたことがあり記憶に残っていたので、自分の発疹を見たとき『とんでもないことになったかもしれない』という驚きと不安に襲われました」

すぐにかかりつけの大学病院へ行くと、大畑さんは入院することに…。

障がいが残るかも…と中絶を勧められ

入院当初は風疹と断定されてはいなかったものの、医師からは「風疹だろう」という前提で、すぐにリスクの説明があったそう。

「『障がいが出る可能性が非常に高い。人工中絶手術を受けて帰るよね』と言われ、耳を疑いました。まさかそんな言葉を聞くとは想像もしていなかったので、頭が真っ白になりパニックでした」

一般的に妊娠20週ごろまでの感染は胎児への影響が非常に高いとされており、医療現場では「障がいを回避するための選択(中絶)」が、リスク回避の観点から一つの「標準的な説明」として提示される側面がありました。医師の言葉は、医学的データに基づいた「あまりに過酷な確率の提示」だったのです。

(※参考=育児と乳歯の情報サイト「ママ、あのね。」|妊娠時に気をつけたい感染症「風疹(ふうしん)」

突然の出来事にどうしたら良いかわからず、まだ気持ちの整理がつかない大畑さんに対し、医師からはさらに踏み込んだ説明があったといいます。

「『きっとお腹の赤ちゃんは、目も見えないし耳も聞こえない。もしかしたら脳にも障がいがあって、手話さえ覚えることもできないよ。それでも産むの?』と言われました」

医師からの言葉で絶望の淵にいた大畑さんを救ったのは、家族の言葉でした。当時、大畑さんの夫は知人の子を交通事故で亡くしたばかりで、「命の尊さと儚さ」を痛感していたといいます。

「『人はいつ何が起きるかわからない。長女も次女も、これから何があるかわからないけど見捨てたりはしないだろう?お腹の子も一緒や!目が見えへんかっても聞こえへんかっても、僕らが守ろう!』と言ってくれました」

大畑さんの実母もまた、二度の流産や第一子を生後間もなく亡くした経験があることから、温かい言葉で背中を強く押してくれたといいます。

「『産みたいなあ!産んだらええやん!もし重い障がいを持って生まれて来やったら、おかあちゃんの籍に入れて、おかあちゃんが育ててあげるわ。産んだらええやん』と言ってくれました。そして私は産むという決断をすることにしたんです」

娘は右耳に軽度の難聴

CRSは早産が多いとされており、大畑さんも32週で陣痛が始まり、入院しながら36週までもたせ、無事に出産したといいます。娘さんは右耳に軽度の難聴を抱えて生まれましたが、視力や心臓には異常ありませんでした。

「赤ちゃんが寝てもあえて静かにせず、生活音を隠さないようにしました。大きな音で驚いてくれると、『聞こえてる!』と嬉しくなりましたね」と、当時の生活を振り返ります。

「娘を産んだことを後悔したことは一度もありません。娘の成長は日々いつも嬉しかったですし、何があっても受け止める覚悟ができていたので、前を向いて娘の成長を見守りました。でも、お腹に赤ちゃんがいるのに風疹にかかってしまったことは、今でも申し訳なかったと思っています」

風疹をなくそうの会「hand in hand」を結成

やがて大畑さんは、「同じような思いをする人を増やしたくない」という思いから、2013年に風疹の流行を機に「風疹をなくそうの会 『hand in hand』」を立ち上げます。活動の大きな壁となったのは、かつて制度の谷間で予防接種の機会がなかった、現在40〜50代を中心とする男性世代への啓発でした。

「風疹の流行時、罹患者の8割は年配の男性だとわかっていました。国や自治体に要望を伝える際、私は『数字』だけでなく、その裏にいる妊婦や家族の思いを想像してほしいと訴え続けてきました。『なかったことにされる命』があることを、自分事として捉えてほしかったのです」

粘り強い活動の結果、第5期定期接種(クーポン券の配布)などの施策が実現しましたが、依然として接種率は理想に届いていません。大畑さんは、風疹の予防接種のことを"思いやりのワクチン"と表現しています。

「世の中には、『自分は“赤ちゃん”とは縁遠い』と感じている方もいるでしょう。でも、ウイルスは人を選びません。風疹のように、症状が出ないまま人にうつしてしまう『不顕性感染』があります。誰も気付かない間に、お腹にいる赤ちゃんだけがウイルスをもらってしまい、影響を受けて生まれてくる―。こんな衝撃があるでしょうか? 『誰かにうつさない』という思いやりで助かる命がある、防げる障がいがあるということを知ってほしいのです。

決して難しいことではなく、自分の身を守ることが、結果として誰かの大切な人を守ることにつながる。予防できる手段があるなら、それを選ぶ―。これって、実はとてもシンプルで素敵な『思いやり』だと思うんです。 『風疹にかからない、広げない』―そのために受ける予防接種が、どれほど大きな意味を持つのか。一人でも多くの方に届くことを願っています」

大畑さんは現在も「風疹をなくそうの会 『hand in hand』」の運営メンバーの一人として、地元の大阪府守口市を中心に活動を行っています。

「声を出す、伝える、諦めない!自分の通った道だからこそ、『同じ思いをする人を作らない!』という思いで活動しています。まずは、自身の近くの人に伝える。そして、その人の知り合いにも伝えてもらう―。大きなことはできませんが、ひとりでも『そうなんやな!』と行動してもらえたら嬉しいなと思っています」

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