退職代行サービスを利用して会社を辞める人が増えていると話題になっています。
株式会社パーソル総合研究所が実施した「離職の変化と退職代行に関する定量調査」によると、正社員離職者のうち5.1%、20人に1人が退職代行を利用していることが明らかになりました。離職者の不満は「長時間労働」から「成果圧力」へと変化しており、働き方改革後の離職構造が浮き彫りになっています。
直近1年以内に離職した正社員らを対象に、2025年8月から9月にかけてインターネットで実施されました。
退職代行利用者は若年層と早期離職者が中心
調査結果では、退職代行利用者の半数は20~30代の若年層で、前職の在籍期間が「1年未満」は4割に上りました。一般離職者の倍です。
利用した退職代行サービスの運営主体については、民間企業が4割と最も多く、労働組合も3割を占めています。
退職代行利用後のトラブルについて聞いたところ、「なかった」が5割。トラブル内容は「金銭」が最多となりました。
上司との関係悪化とハラスメントが利用の背景に
退職代行利用者の前職への不満で最も多かったのは「直属上司との関係」で7割に達しました。また、「直属上司からのハラスメント」も4割に上っています。職場における人間関係の悪化やハラスメントが、退職代行利用の大きな要因となっていることが分かります。
協調性が高いのに孤立する退職代行利用者
興味深いことに、一般離職者と退職代行者のキャリア観を比べたところ、退職代行利用者は一般離職者に比べて「周りの人たちと密に力を合わせて働きたい」というチームワーク志向が強い傾向が見られました。
また、前職に対する意識を尋ねたところ、前職の関係者に対して「申し訳なさ」を感じていたり、自分を「裏切り者」だと感じている人も多くいました。
協調的に働きたいという理想を持ちながら、実際の職場では孤立し相談できる相手がいないというギャップがうかがえました。退職代行利用者は一般離職者や就業継続者に比べ孤立度が高く、「直属の上司」以外に「自部門の同僚」や「家族・親類」「友人」といった相談相手がいない点が特徴です。
離職していない正規雇用者全体でも、61.4%が自分のキャリアなどについて「職場で相談できる人がいない」と回答しており、相談できる仕組みの構築が課題となっています。
離職理由が「長時間労働」から「成果圧力」へ変化
離職者全体の不満を6年前と比較すると、「求められる成果が重すぎる」「受けている評価に納得できない」「上司の指示や考えに納得できない」といった成果圧力に関する項目が上昇した一方で、「サービス残業が多い」「労働時間が長い」「育成・教育の体制が十分でない」は大きく減少しました。
実際に、離職者の残業時間はこの6年間で大幅に短くなり、月40時間以上の残業は半減しています。働き方改革の進展により、かつて主要な離職要因だった長時間労働の問題は改善された一方、新たな離職構造が生まれていることが明らかになりました。
若年層の成長意欲低下と上司の支援不足
コロナ禍以前の2019年と比較して、若年層を中心に「仕事を通じて成長したい」「成果で評価されたい」という意識が減少していることも分かりました。特に20~30代では「仕事の成果で評価してほしい」という志向性が大きく減少しており、これは他の志向性の変化と比べても最大の変化となっています。
同時に、上司による育成支援行動も減少傾向にあります。「責任のある役割を任せてもらっている」「十分なフォローがある」「スキルや能力が身につくような仕事を任されている」といった、部下の成長を重視するマネジメント行動が減っているのです。
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退職代行利用の普及という現象は、通俗的な若者論やハラスメントなどの要因に安易に単純化すべきではありません。背景には、職場の人間関係の希薄化による上司へのコミュニケーションの集中と、従業員の志向性とのギャップがあります。こうした状況はいずれの組織にも起こり得るものであり、人的ネットワークを構築する対策が求められています。
【出典】株式会社パーソル総合研究所
https://www.persol-group.co.jp/