昨年の夏、キジ白猫の「にもの」ちゃん(1歳・女の子)は、草むらの奥でかすかに鳴く声をあげていました。目はまだ開かず、へその緒がついたままだったといいます。その状況に気づき、急いで駆け寄ったのが、Xユーザー・にものちゃんねる【保護猫日記】さん(@nimono20240812)でした。
草をのぞくと、そこには乳のみ子猫がいた
にものちゃんを保護したのは、2024年8月12日。草むらから聞こえてきた鳴き声に気づいた飼い主さんは、思わず足を止めました。
「猛暑日で、気温40度という炎天下、草むらのなかで隠されるように上から草をかぶせられた状態でした。生まれたばかりで、たったひとりで、最後の力を振り絞るように大きな声で鳴いていたんです。そばに親猫やきょうだい猫の姿はありませんでした」
保護後、すぐに病院へ向かう予定でしたが、お盆で診察できる場所がなかなか見つからなかったといいます。
「どのように里親さんを探すか考える余裕もなく、一分一秒をあらそう状況のなか、ようやく保護したものの、お盆で動物病院はどこもお休みでした。それでも必死に探し回り、見つけた動物病院のインターホンを鳴らして事情を伝えました。すると、ありがたいことに快く診察してもらえて、体重78グラム、生後0日の子だとわかりました」
そこで初めて、生後すぐの子猫を人の手で育てる厳しさを知ったといいます。
「先生からは、保護した状況から『人間に捨てられた可能性が高い』と言われました。ミルクを3時間おきに飲ませること、排泄を促すケアが必要なことーーそして人間が子猫を育てた場合の生存率はとても低いことも知り、『絶対に死なせない!』という気持ちでいっぱいでした。名前には、愛情がじっくり染み込んだ猫生を送ってほしいという願いをこめています」
「生きて!」祈りながらミルクを飲ませる日々
この日を境に、にものちゃんを守るため、昼夜を問わないお世話が続きました。とくに体温管理には気をつかったといいます。
「とにかく体を冷やしてはいけないと思い、毛布や湯たんぽ、ホットマットで保湿につとめました」
にものちゃんは少しずつしかミルクを飲むことができなかったため、想像以上に細かなケアが必要でした。
「一般的には3時間おきですが、にものは1時間から1時間半おきになりました。ミルク後は口のまわりがカピカピになってしまうことも。眠るたびに『もう目を覚まさなかったらどうしよう』と不安で…。経験のない人間が育てることで、さらに生存率が下がるのではと思い、毎日『生きて!』と祈りながらお世話していました」
飼い主さんの心のこもったお世話に応えるかのように、にものちゃんはすくすくと成長していきました。
「にものは前足を人間の手のように器用に使うんです。私が撫でると、にものは私の顔に前足を置いて撫でる仕草をするのですがーー爪が当たって痛いんです(笑)。でも、かわいくて止められません。名前を呼べば返事をしてくれるし、おやつを『食べたいの?』と聞くと『ウワーン』と鳴いて舌をペロペロします。寝相もとてもダイナミックです」
「ありがとう」の気持ちで満たされる日々
にものちゃんは今、かけがえのない家族の一員になりました。あのとき消えかけていた命は、強くしなやかに輝きを放っています。
「にものには『ありがとう!』という感謝の気持ちでいっぱいです。生後まもなく生死をさまよいながら、小さな体でずっと頑張ってくれています。助けたというより、私が救われました。温かく愛しい気持ち、幸せを与えてくれています。にものと出会わなければ、この幸せを知ることはありませんでした。『これからもずっとよろしく!』と伝えたいです」
その名前の通り、たくさんの愛情を受けて幸せな時間を過ごしているにものちゃん。これから続く猫生も、穏やかで豊かな日々が広がっていくはずです。