京阪三条駅北東の檀王法林寺(京都市左京区)に「黒い招き猫」が伝わる。その謎を探る特別展が昨年、佛教大宗教文化ミュージアム(右京区嵯峨)で開かれた。黒い招き猫は同寺では夜をつかさどる「主夜神」の使いとされ、廃仏で荒れた寺の復興に一役買ったとみられる。現代では宝くじ当選のご利益がうわさされるなど、時代ごとの願いが託されてきた歴史をたどった。
主夜神をまつる寺院は少ないが、同寺では1611年に開山した僧・袋中(たいちゅう)の時代から信仰してきたと伝わる。本堂では主夜神像の前に招き猫が置かれ、同型の授与品もある。
特別展では主夜神像を展示。唐服の女神で、火災や盗難よけの功徳があるとされる。境内の主夜神堂にあったが、昭和30年代の堂解体後は本堂に移った。
主夜神像の前にある招き猫7体は高さ4~15センチ。主夜神の使いとされた起源は不詳だが、昭和初期には人気の授与品だったと寺の日誌から示した。当時の説明書もあり、客やお金を招き入れるご利益が説かれている。
この頃、荒れた境内の復興を当時の住職、信ケ原良哉が進めていた。主夜神尊大祭の復活や寺宝調査、子どもの教育など寺外を巻き込んだ試みを続けた。
東城義則学芸員は、招き猫の盛んな授与に「寺を何とか守りたい思いがこもるのでは」と推し量る。
太平洋戦争で法要は絶えたが、1998年に復活。招き猫も再び人気を集めたが、予期せぬ注目も生じた。
赤い座布団と黒い猫が「赤字から黒字」とイメージされ「宝くじのご利益があるとのうわさが広まった」と、信ケ原雅文住職(71)は驚きを振り返る。
近年、台湾人の入手希望も多い。理由は不明だが、仕事や観光での滞在中に数十個を求めに来る人も。配送した時期もあったが、転売された可能性もあり、現在は参拝者への授与に限っている。信ケ原住職は「広まるのはうれしいが…」と複雑な思いを明かす。
「招き猫に新たな意味が付加され続けている」と東城学芸員。現代までの歩みをたどる展示から、生きた信仰を感じ取れた。