文房具店で働くYさん(34歳女性)は、3月と記されたカレンダーを見ながら「また今年もこの季節か…」と落ち込んでいました。理由は入学進学に必要な学用品の駆け込み需要です。
Yさんが働く文房具店は地域でもかなり大きな老舗店舗です。そのため近隣の学校の生徒が毎日多く来て、店頭は常ににぎわっていました。そこに入学進学準備の買い物として多くの商品を購入する保護者が多く来店することで、Yさんは文字通り休む暇もなく働くことになります。
その日も、多くの保護者から「これはどこにあるのか?」「これのサイズ違いはあるのか?」などの問い合わせに翻弄され、閉店まで休憩なしで働いたYさんは、ふと「昼休みがないのって違法じゃないの?」と不満を感じます。
さらにSNSで調べてみても、「お昼休みなし」「休憩なしで働いた」などの投稿が多く見られ、Yさんはより一層不満をため込んでいくのでした。このような「昼休みが取れない」状況は違法なのでしょうか。社会保険労務士の小島朋子さんに話を聞きました。
1日の労働時間が6時間を越える場合、休憩時間は絶対必要
━昼休みが取れない状況は違法なのでしょうか?
1日の労働時間が6時間を越える場合には45分間、8時間を越えるときには少なくとも1時間を休憩時間として与えなければなりません。
これは労働基準法の第34条に定められており、休憩時間が取れない状況は第34条違反となります。
また、休憩が恒常的に取れない環境は、労働者の健康を害する恐れがあり、安全配慮義務違反となる可能性もあります。
━昼休みが取れなかった時間分の賃金を請求することはできますか?
所定の休憩時間に仕事をせざるを得なかった場合、その労働した時間にみあう賃金の支払が必要です。
━雇用している側は休憩を取れない職場の状況を改善しなければならないのですね。
使用者は労働者が休憩を取れるように環境を整えなければならないので、増員やシフト管理改善、営業時間の変更等の対応が求められます。
休憩が取れないことが続く場合は、記録を残したうえで上司や人事に相談してみましょう。
それでも解決しなければ、労働基準監督署へ相談することも選択肢となります。
◆小島朋子(こじま ともこ)
社会保険労務士/社会保険労務士事務所ホライズン代表 千葉県を拠点に活動。障害年金の代理請求を中心に、法人向けには労務に関する各種相談、給与計算業務や給与ソフトの導入・設定確認など。会社と人との良好な関係を築くためのサポートに取り組む。