いちばん状況を理解してなかったのは「エサを投げ与えた人」
その後、駆けつけた地元の自治体や警察の方々から、キャンプ場にいた全員が「餌付け」を強く叱責され、猟友会の方からも「全員やられてもおかしくなかった」と言われたそうだ。
「その場にいた全員が、肉を投げたことをめちゃくちゃ叱られました。僕が投げたんじゃないのに…って思ってたんですが、前日だけでなく当日も肉を投げていた人がいちばん話を聞いてなくて、『人間がクマが住むとこを減らしたのに。悪いのは人間なのに。熊を殺すことはないのにな』って言ってました」
<すらたまさんのXの投稿より>
熊は「エサをくれたヒト」を嗅ぎ分けていた⁉︎
犬は剥がれた皮膚の破片などからでもターゲットを発見できる優れた嗅覚を持つことで知られるが、なんと熊の嗅覚は犬の5倍~10倍なのだという。
キャンプ場に現れた熊も、前足をかけたハイエースの中にいた「エサをくれたヒト」を容易に嗅ぎ分けられたに違いない。
「ただ、ハイエースが焚火からいちばん近いところに停まっていたので、熊がエサを与えた人物だけを狙っていたかは不明です。そもそもみんなが車に退避する際も、前日に加えて当日も熊にエサを与えていた人だけが1人モタついていて、全員が車内に入ったから仕方なく自分も車に戻る…という感じだったのもあるかもしれません」(すらたまさん)
人間が捨てたゴミも「人間というエサ」の一部
その後、「デリカスターワゴン」の持ち主がかけたディーゼルエンジンの大きな音とヘッドライトに驚いたのか、熊はすぐに森の方へ引き下がったという。
「ただ僕にはその行為も、たまたま同じ場所に居合わせただけの人を守る代わりに、自分が犠牲になりかねない行動のように思えました。あの夜、熊が戻って来ないか不安で朝まで眠れなかったのは、きっと僕だけではなかったと思います」(すらたまさん)
キャンプ場に出没した個体と思われる熊はその後、駆除されたそうだ。
無知な人間が安易に投げ与えた「エサ」が引き金となり、熊が危険な個体となってしまう経緯については、「ソーセージ」と名付けられたメスのヒグマの実話【「ソーセージの悲しい最期」のお話】(「公益財団法人 知床財団」HP)に詳しく記述されている。
「こういった人間の浅はかな行動の積み重ねが、近年の熊被害の増加の要因のひとつじゃないかと感じています。僕は現在、キャンピングカーを手放してバイクでキャンプに行ってますが、2度と熊に遭遇したくありません。
熊は餌やりだけじゃなく、人間が捨てたゴミも<人間の一部>だと思ってしまうそうです。登山や山菜取り、キャンパーなどが森や山の中に気軽にゴミを棄ててしまうことが、熊に人間を餌だと認識させてしまう可能性がある、ということを広く知って欲しいと思います」(すらたまさん)