「釣りの帰り熊に襲われかけた」で始まるツイートと動画。投稿者さんが自転車で山道を走行中、道路わきの茂みから現れたツキノワグマに襲われかけたものの難を逃れたという内容です。クマの出没情報は2022年度は11135件、人的被害は75人で2人が亡くなりました。クマとヒトの不幸な遭遇を避けるためにできることは。投稿者さんに聞きました。
投稿者さんや動画によると、釣りの帰り道、自転車で道路左端を走っていると、緩やかなカーブの先の茂みで中で動く大型の動物を発見。ガードレールを乗り越えてとびかからん勢いのそれはかなりの大きさのツキノワグマでした。「うわぁ!」ととっさに右にハンドルを切り、全速力で自転車をこぎます。クマはその後、追うのをやめ道路右側の藪の中へ。遭遇から10秒後、「危ねえ」と投稿者さんが思わず漏らした言葉が事の重大さを示します。
熊鈴も撃退スプレーも所持していましたが、自転車のため使えませんでした。「一か八か全力で加速したら逃げ切れた びっくりさせてごめんよ熊さん ツキノワグマの最大級かと思えるくらいデカかった」と振り返ってツイートした投稿者さんに聞きました。
反射的に攻撃?
ーークマを見つけた瞬間は
「うなり声はなく、ガサガサと音が聞こえたのでそちらを見たらすでにこちらに向かってくるのが見えました。わずかにクマの方が早く自分に気がつき反射的に攻撃したのだと思います。大きさははっきり言えませんがツキノワグマにしてはかなり大型だと思います」
ーー攻撃をかわした後は
「2、3秒ほど猛スピードで直線的に追いかけて来ました。その後はこちらを追いつつも速度を落としやがて反対側の茂みに行きました。最初に遭遇した地点から50〜100メートルくらいです。クマはしつこく追ってくることがあるらしいので、念のため1キロくらい走行し追ってこないことを確認し自治体に通報しました」
ーーさぞ怖い思いをされたと思います。
「今回は自分の不注意です。車で週に1、2回通る道だったので油断していたこともあります。しっかり(熊鈴などで)人間の存在をアピールしていればこのような不意の遭遇はなかったはずです。あらゆる意味でクマとは出会わないのが最良です」
動画投稿後、「ご無事で何よりです」と気遣うユーザーに投稿者さんは「もっと気をつけていれば出会うこともなかったですから もし攻撃されて怪我でもした場合、下手したら駆除対象ですからね 自分の不注意で駆除されるかもしれなかったと思うと熊に申し訳ないです」とコメントしています。まいどなニュースの取材に対しても「過剰に熊を危険視するような内容にはしないで」と語りました。
人里への出没
ツキノワグマは本州と四国に生息。平均的な個体で、頭胴長(頭の先からお尻まで)はオス120~150センチ、メス100~130センチ、体重はオスが40~100キロ程度、メスが30~60キロ程度。個体差や季節の変動が大きく、記録によると1967年に宮城県で捕獲されたオスは体重220キロもあったといいます。
クマに襲われる事案は全国で起きており、5月中旬には北海道幌加内町の朱鞠内湖で釣り客の男性がヒグマに襲われて死亡した。ツキノワグマはヒグマほど大きくはないが、襲われれば到底太刀打ちできません。
近年、人里へのクマの出没による人身被害が増加傾向にあり、ヒトとクマのあつれきはいっそう深刻な状況となっています。このため、環境省は2021年4月、これまで蓄積してきたデータを踏まえ、14年振りにクマ類の出没対応マニュアルを改定しました。
マニュアルは遭遇した際に取るべき行動として以下の点を挙げています。
遠くにクマがいることに気が付いた場合は、落ち着いて静かにその場から立ち去りましょう。
近くにクマがいることに気が付いた場合は、クマを見ながらゆっくり後退するなど、落ち着いてクマとの距離をとりましょう。
至近距離でクマと突発的に遭遇した場合は、クマによる直接攻撃など過激な反応が起きる可能性が高くなります。顔面・頭部が攻撃されることが多いため、両腕で顔面や頭部を覆い、直ちにうつぶせになるなどして重大な障害や致命的ダメージを最小限にとどめることが重要です。クマ撃退スプレーを携行している場合は、クマに向かって噴射します。
親子連れのクマと遭遇した場合は母グマが攻撃行動をとることが多いため注意が必要です。子グマが単独でいるような場合でもすぐ近くに母グマがいる可能性が高いため、速やかにその場から立ち去りましょう。
クマ撃退スプレーはクマを十分引き付けてから顔に向かって噴射することが重要です。事前に使い方を練習し、いざという時にすぐ使える場所に携帯することが必要
とはいえ遭遇した際、「こうすれば助かる」という対処法はありません。不意の出会いを避けるため、威嚇効果はなくても人間の存在を知らせるためには熊鈴は有効とされていますが、自転車の場合は熊鈴を鳴らしていても熊が逃げるより先に鉢合わせしてしまう可能性も捨てきれず、自転車ユーザーは注意が必要です。投稿者さんは「あらゆる手を尽くして熊とは出会わないようにするのが最良です」と強調しています。