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「君のためを思って」 会話の端々にこのフレーズ→モラハラの初期段階サイン! 自責傾向の強い人は被害に遭いやすい【夫婦関係修復カウンセラーが解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

結婚3年目を迎えたAさんは、近頃、夫の言動に悩まされています。夫は誰もが羨むような優しい人で、結婚当初にはAさんがインフルエンザで寝込んだ夜に、一睡もせずに額のタオルを替え、おかゆを作ってくれたこともありました。

その夫が、少しずつ変わり始めていたのです。たとえばAさんが買った新しいワンピースに対して、「君のためを思って言うのだけど、もっと落ち着いた色が似合う」と口を出すなど、Aさんの行動に対して静かに、しかし丁寧に物申すようになったのです。

それから、夫の「君のため」は、Aさんの日常の隅々にまで及ぶようになります。例えば、Aさんが長年の友人とのランチの約束を伝えると、夫はどこからか仕入れてきたその友人の悪い噂話をささやき、付き合いを考え直すよう諭しました。またAさんが作った肉じゃがの味が少し濃い日には、将来の健康を案じているのだと夜遅くまで延々と食生活の改善について語り続けます。

日に日にエスカレートする夫の言動に対して、当初は「心配をしてくれているんだ」と考えていたAさんも、「これは本当に愛のある言葉なのか?」と疑うようになってきました。これは、いずれ深刻化するモラハラへの入り口なのでしょうか。夫婦関係修復カウンセリング専門行政書士の木下雅子さんに話を聞きました。

「君のためを思って」という前置きは、最も警戒すべきサイン

ーモラハラの初期段階でよく見られる「危険なサイン」はありますか

モラハラは、ある日突然始まるものではなく、多くの場合、気づかれにくい小さなサインから始まります。「君のためを思って」という前置きは、最も警戒すべきサインの一つです。この言葉を盾に、相手の個人的な領域に干渉し、自分の価値観を押し付け始めます。

愛情深いアドバイスのように見えますが、実態は「俺の言う通りにしろ」というコントロールである場合が多いです。一回一回の影響は小さく見えるかもしれませんが、これらが繰り返されることで、被害者は徐々に精神的な主導権を奪われていくのです。

ー「愛情」や「心配」と、「モラハラ」の境界線はどこにありますか?

両者の境界線は、「相手の意思と人格を尊重しているか」という一点に尽きます。愛情や心配は、常に対等な関係が前提です。例えば、パートナーの服装について意見を言う場合でも、「僕はこう思うけど、君はどう思う?」というように、相手の選択の自由を奪いません。

一方、モラハラは、「自分は正しく、相手は間違っている」という歪んだ信念に基づいています。相手を自分より下の存在とみなし、「正しい俺が教育・指導してやっている」という上下関係を作り出します。

話し合った結果、被害者が不安や罪悪感を抱いたり、自信を失ったりするなら、それは愛情ではなく支配と考えたほうがいいでしょう。

ー被害を受けている側が自分が悪いかもと思うのはなぜでしょうか

被害者が「私が悪いのかも」と思い込んでしまうのは、心が弱っているからではなく、モラハラの巧妙な手口によって、そう考えるように仕向けられてしまうからです。モラハラは「愛情」や「心配」といった善意の仮面をかぶって始まります。「私のことを思ってくれているからこそ、厳しく言ってくれるんだ」と、被害者自身が加害者の言動をポジティブに解釈しようと努めてしまうのです。また、もともと自責傾向が強い人も、被害に遭いやすい傾向があります。

いずれにせよ、ひとりで対処するのは困難です。違和感を覚えたら専門家に相談するなどして、抱え込まないようにしましょう。

◆木下雅子(きのした・まさこ)
行政書士、心理カウンセラー。大阪府高槻市を拠点に「夫婦関係修復カウンセリング」を主業務として活動。「法」と「心」の両面から、顧客を支えている。

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