「エルピス」や「虎に翼」にも言及 「令和の寅子」と言われる弁護士の闘いとは

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 「再審弁護人のベレー帽日記」は雑誌の連載コラムを一冊にまとめた書籍。始まりは2021年春。鴨志田祐美さんが刑事訴訟法の「再審法」改正に向けた活動を本格化するにあたり、鹿児島から京都に移り住んだタイミングだった。「濃密な3年半だった」。そう語る、自身の闘いの記録でもある。

 再審事件にまつわる折々のトピックを自由闊達(かったつ)に解説するスタイル。再審無罪が確定した「湖東記念病院事件」や再審請求中の「日野町事件」、鴨志田さん自身が20年にわたり弁護してきた鹿児島の「大崎事件」など、大きなニュースになった事件が次々と登場する。

 鴨志田さんは「再審事件を知ることは、刑事司法全体の問題を知るということ。刑事司法のあらゆる問題が再審に行き着く」と語る。冤罪(えんざい)を真正面から取り上げたテレビドラマ「エルピス-希望、あるいは災い-」、司法の歴史を追ったNHK連続テレビ小説「虎に翼」にも言及し、司法への関心が高まっていることを歓迎する。

 最終章は「袴田事件」の再審公判に割いた。昨年秋に袴田巌さんが無罪判決を勝ち取るまで、別の事件の司法判断や世論の盛り上がりなど、大きなうねりがあったことが理解できる。鴨志田さんは「冤罪はひとごとではない、という共感が広がったことは3年半の大きな変化」と感慨深げだ。

 大切にしてきたのは「当事者の目線」。法律家としての視点も生かしつつ、冤罪に巻き込まれた人の怒りや悲しみに寄り添い、筆に込めた。弁護士の仕事もしながら毎月4500字を書くのは大変だったと振り返るが、司法制度を巡る課題は山積みで、「ネタに困ることはなかった」。

 メディアへの露出も増え、問題の発信に貢献してきた。昨年は「虎に翼」の主人公にちなみ、週刊誌の特集で「令和の寅子」とも呼ばれた。ムーブメントとなったことで、再審法は改正の一歩手前という段階まで進んでいる。

 「袴田さんが無罪になり、法が変わるかもしれないところに来ている。話題になった事件の背景に何があったのかを知って、歴史のダイナミズムに触れてほしい」

 「再審弁護人のベレー帽日記」は創出版刊、1870円。

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