お寺の清酒提供は不謹慎? 京都・東本願寺で堂々と酒が振る舞われる理由

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 お寺でお酒が振る舞われる-。こう聞くと「不謹慎」と思う人がいるかもしれない。しかし、東本願寺(京都市下京区)では期間限定だが、堂々と参拝者に清酒が提供される。同寺で振る舞われるお酒について、その歴史を尋ねた。

 真宗大谷派本山の東本願寺で毎年11月下旬に宗祖親鸞をしのぶ法要「報恩講」が七昼夜にわたって営まれる。このときに出される清酒が「五環正宗」だ。東本願寺の紋である「五環紋」にちなむ名前が付けられている。

 報恩講期間中、通常非公開の大寝殿(重要文化財)や表小書院(同)では精進料理「お斎(とき)」を事前予約で食べることができる。その際にかわらけの杯で味わえ、お土産に持って帰ることができるのが「五環正宗」だ。

 お斎での五環正宗はいつから提供されているのか。同派財務部によると、五環正宗は江戸時代後期から門前の酒店で醸造されていた。しかし第2次世界大戦で醸造は中断。その後、酒店は酒造りをやめてしまったという。

 1992年、「また飲みたい」と求める声に応えて復活が決まった。かつて醸造していた酒店が発売元となり、上京区の酒造会社、佐々木酒造が製造元となるかたちでおよそ半世紀ぶりに五環正宗が味わえるようになった。以降、お斎には欠かせないお酒として定着している。

 同派財務部は「ぜひ東本願寺をお参りして真宗の教えに触れるとともに、五環正宗を持ち帰って報恩講の歴史に思いをはせてほしい」とする。

 今年の報恩講は終了したが、境内にある東本願寺お買い物広場でも1800ミリリットル入りと300ミリリットル入りの2種類を購入できる。インターネットでも「東本願寺願生舎オンラインショップ」で販売されており、全国から入手できる。

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