“レトロ”なカメラはもはや文化?若者が古いカメラ、年配の人が最新機種を買う「逆転現象」、その理由とは…

山陽新聞社 山陽新聞社

 フィルムカメラ、中古のデジカメ、インスタントカメラなど“レトロ”なカメラの人気が高まっている。SNS(交流サイト)にアップする際、味わいのある画質になるため、若者の間で「エモい」と話題に。新型コロナウイルスの5類移行に伴う外出機会の増加でニーズが高まっているほか、外国人客にも土産物として売れており、岡山県内の店舗では品切れ状態の商品も出ている。

 「中古カメラの人気は一過性のブームでなく、文化として定着している」。1901年創業のアサノカメラ(岡山市北区表町)で、中塚博晶社長(47)が話す。昭和初期から最新機種まで2千台以上のカメラをそろえる中でも、中古のコンパクトデジタルカメラの人気が高く、現在は品薄状態になっている。

 けん引役は若者だ。古いカメラは画質が粗いものもあるが、それがかえって味わい深いとして、数年前からSNSなどへの投稿が相次ぐ。同店では若い世代が祖父母から譲り受けたカメラの修理依頼に来たり、最新モデルのカメラにあえて古いレンズを選んだりするケースもあるという。

 TikTok(ティックトック)で見た2000年代のカメラを探しに来たという同市内の高校3年生(18)は「テーマパークなどで撮影するとき、背景は現在なのに画質が古いとエモいし、光の加減も良い。インターネットやリサイクルショップで探しているが見つからない」と話した。

 高画質の写真が撮れるスマートフォンの普及で、カメラの販売が落ちた時期もあったが、中古カメラ人気もあって店の売り上げは10年前に比べて約1・5倍となり、今年の販売台数は昨年同期より500台ほど増えているという。中塚社長は「若者が古いカメラ、年配の人が最新カメラを買うというある種の逆転現象も起きている」と分析する。

 1947年創業のフジカメラ(同)にもフィルムカメラや中古デジカメを求める若い女性や外国人客が相次ぐ。明治初期のモデルや50年代のドイツ製カメラといった古い製品に関心を持つ若者も多く、岸本洋次郎社長(81)は「10年前は新品が求められたが古いものが見直されてきている」と話している。

家電量販店、目立つ場所にコーナー

 家電量販店でも、かつて話題となった懐かしのカメラを求める動きがある。

 ビックカメラ岡山駅前店(岡山市北区駅前町)は地下1階のレジ前に、フィルムカメラ19種類と、インスタントカメラ12種類を並べている。問い合わせが増えているため、昨年末に目立つ場所に専用コーナーを設けた。

 中でも人気なのは、レンズ付きフィルム「写ルンです」。初期の商品が発売されてから約40年たったいま、再び注目を集めている。毎月約160個を入荷するものの、3週間ほどで売り切れるという。約30年前に登場したインスタントカメラの「チェキ」シリーズもよく売れ、在庫切れが続く商品もある。

 ともに海外で買うより安いため、中国や台湾などからの訪日客が土産にするケースも目立つという。フィルムも品薄状態が長く続き、購入数を制限する張り紙には英語と中国語も付けた。

 同店によると、長らく高画質のデジタルカメラを求める傾向が強かったが、SNSの普及に伴い2017年ごろからフィルムカメラなどの売り上げが増加。コロナ禍に一時減少したものの、5類移行後はさらに人気が高まり、コロナ禍前より売り上げが伸びているという。

 店内ではフィルムを現像してデータ化するサービスも行い、データはスマートフォンに転送できる。現像のため訪れた岡山大4年生(25)は「友人がSNSにアップして良かったと言うのを聞いて、今春に使い始めた。普段はスマホで撮影するが、フィルムの方が『映える』ので、旅行など特別なときに使う」と話していた。

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